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一度目の春に添えられるいただきもの

部屋の中で河津桜が咲いている。新井の土産物店で買い物をしたおまけでいただいたものだ。昨年も河津町でもらって部屋が桜まみれだったため、またこの季節がやってきたんだなあと。まだ暖房が必要なくらい寒い日もあるのに、桜が咲いているのは不思議な感じだ。もうじき花びらは落ちて葉桜となり、一度目の春が終わる。そして4月頃にまた別の桜が咲き始める。伊豆は春を二度も楽しめる場所なのだ。



買い物へ出かけようと家の外へ出ると、ご近所さんたちがいつもの場所で集まって話していた。最近見なかったねー。引きこもってたの?と聞かれる。そう、私はしばらくの間引きこもっていた。映像編集とWEBデザインとコラムとイラスト描き下ろしの依頼が重なってしまい、自分が作りたいものもあるため、それを合間にやっていたら2ヶ月ほど過ぎていた。よく色んなことができるのを褒めてもらえるのだけど、それだけ一人で黙々とやっている時間が長いただの引きこもりだと自分では思っている(笑)

でも、やっぱり完全に一人きりになってしまったら寂しくなるのだろう。私がこの街で寂しさを感じないのは、一歩外へ出れば自分のことを知ってくれている人たちがいて、こうしてたわいもない会話ができるからだと思っている。行ってらっしゃいと見送ってもらい、出先ではお肉のつくばやさんと話したり、いつも散歩をしているおじいちゃんに手を振ったりした。ほどよく知り合いに会えるこの距離感が気に入っている。大きすぎず、小さすぎない街のサイズがそのほどよさを生み出しているのだろう。買い物を済ませて戻ってくると、今度は違うご近所さんがいて、みかん食べない?と聞かれた。ちょうどなくなりそうだったため大喜びでいただく。新井でもみかんが取れるらしく、よくお裾分けしてもらうため買う頻度はかなり減った。新井のみかんは見た目がごつごつしているけど、中身は変わらずおいしい。


会って話しがしたいと言われて、少し離れた新井のご近所さんちへと向かう。誰かの家へお邪魔するなんて、なんだか学生時代に戻ったような気分。入り組んだ細道を進み、知らない小道を見つけては行ってみたくなる自分を抑える。また今度、散歩しに来よう。お家は大通り沿いの海の目の前にあった。どうやら私は、わざわざ細い道を通ってきてしまったらしい。でもそのおかげで散歩したい道を見つけられたから結果オーライだ。玄関に自分が描いた魚市場のポストカードが飾ってあるのを見つけて嬉しくなる。コーヒーやお菓子をいただきながら色んな話をして、私が知らない新井のことも教えてもらった。良くも悪くも新井のいいところしか見えていない私だが、大事なのは今だ。ここに住んでいるととにかく驚かれるけれど、私の日々はとても穏やかに、温かく流れている。

新井に住んでくれてありがとうと何度も言われた。お礼を言いたいのは私の方だ。手土産におそらく新井で採れたはんばのりとふのり、手作りのたくあんとジャムをいただいた。自家製のレベルが高い。はんばのりはフライパンにアルミホイルを敷いて、軽く焼いてねと教えてもらう。夕飯では早速はんばのりを焼き、たくあんをおかずに添えた。メインディッシュはこれまたいただきものの干物。いただきすぎ。心も身体も温まる日々に感謝しながら、夕飯を食べた。

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