旧姓の話

2022年8月に結婚して新しい姓になった。
28年慣れ親しんだ旧姓とのお別れは想像以上にあっさりしたものだった。例えるのであれば引っ越して住所変わった時みたいな感じ。なんかもっと寂しくなったり、ふとした時に書き間違えちゃったりするのかなって思ったけど全然そんなこと無かった。
家も変わって仕事も変わってとかあったら新しい人生が始まったんだなって意識から性が変わったことも受け入れられそうだけど、結婚する3〜4年前から同棲していて生活の環境は何も変わらず、性だけが変わったのに私の体はあまりに順応していた。

結婚して1年3ヶ月経ったある朝、びっくりするくらい寝坊した。
出社時間は10時30分、制服に着替える手間があるからできれば10時すぎくらいには着きたいので、家を出る時間は9時、もう何年もそういうタイムスケジュールでやってきたのに、スマホの画面には9時45分の表示。スマホ壊れたか?とか今日休みだっけ?とかいろんなことが一瞬のうちに頭の中を駆け巡った後めちゃくちゃ寝坊してるーーー!!!!と布団を吹っ飛ばし寝巻き脱ぎ捨てて寝室を出る。何からしたらいいのか分からなくて家の端から端を1往復したら気持ちがちょっと落ち着いて、とりあえず職場に連絡しますかねとなった。落ち着いて行動できてえらいぞ〜と自分を褒めながら震える声を抑えた第一声が「おはようございます、(旧姓)です」だった。びっくりした。私まだ旧姓の人格が残ってたんだ。

いろんな国の言葉を流暢に話す人も、喧嘩する時や突発的なことが起こった時など感情が昂った時は母国語が出るってきいたことがあるけど、それと同じなんだろうか。

別に今の名前を特別気に入ってるということも、前の名前が嫌いだったとかそういうこともまったくないし、だからなんだっていうくだらないことなんだけど、本当にびっくりしたんだよね。

結局1時間遅れて出勤して人に迷惑をかけてしまったので、二度と同じことをしないように戒めとしてここに残しておく。
でも言い訳をするのならば寝心地良い布団に社会の歯車としてセカセカ働く社会人が勝てるわけがないので、この件については暖かい布団側によく反省してほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?