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《上半期マーラー巨人で締めくくり》東京芸術劇場で武蔵野音大のコンサートと黒川博行さんの著書「文福茶釜」について

2023年09月19日(火)18時半、

東京芸術劇場コンサートホールで武蔵野音楽大学管弦楽団による「ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37」と「マーラー/交響曲 第1番 ニ長調 〈巨人〉」の演奏を聴いてきました。

演奏者が舞台に揃い、チューニングを終え、指揮者の教授が指揮台に立ち、演奏者をくまなく見渡し、二言三言、言葉をかけてから演奏が開始されます。その様子は、日頃の合奏授業を垣間見るようで、演奏者の表情は真剣そのもの。

念入りなリハーサルを繰り返してきたとみえ、要所をキリリ・ピタッと引き締める指揮者の要求に演奏者が素直に答える、という演奏でした。

プロのオーケストラの演奏もいいですが、大学のオーケストラの演奏も魅力的です。若さと集中力で乗り切ろうとするまっすぐな姿勢が、聴いている私へ伝わってきて、応援したくなります。

プロと学生の違い?

そういえば、薬の効果を調べるには、症状を持つ患者さんの半数に本物の薬を与え、残る半数に「プラセボ」という本物にそっくりな何も効果のない薬を与えるそうです。本物と偽物の薬、それぞれの場合で、症状が回復する割合を調べ、本物の薬を飲んだ患者さんのほうが症状を回復させる割合が高ければ、薬には効果がある、と判断できます。

ですが、何の効果もないほうの薬を飲んで症状を回復させてしてしまう人が、ある一定数いるそうで、これを「プラセボ効果」といいます。

そして、絵の場合は偽物のことを「贋作がんさく」というそうで、作家黒川博行さんの著書「文福茶釜」では、「贋作」をめぐるだましあいが面白く描かれています。

「贋作」の作り方も興味深くて、例えば「墨画」の場合、墨で描かれている和紙を、薄く上下2枚に剥がして分けてゆきます。上の1枚は当然ながら本物、下の1枚も少し墨が薄いかもしれませんが間違いなく本物です。

本物の芸術作品が2つ出来上がります。さて、どうやってもうけましょうか、というあたりが小説の中で語られます。この手法を「相剥あいはぎ」というそうです。

映画にもなっていまして、私の見間違いでなければ、原作を書いた黒川博行さんは病院のベッドで横になっている役として(セリフなしで)出演しています。

コンサートの話に戻ります、

まだ「プロ」ではない、学生の方々の演奏を聴いて、感動する私のような者がある一定数いるわけで、

そんな私は「ブラボー」の代わりに「プラセボー」と叫びました、

心の中で。


読んでいただき、ありがとうございます。

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