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現代の編集者は一人出版社になり得る:ディスカヴァー編集教室で学んだこと

昨日は、ディスカヴァー編集教室の第5回講義でした。

コロナウイルスの影響で延びた第5回

元々は、2月29日に開催される予定の第5回講義が、コロナウイルス禍を避けるため、延期されたものです。本当は、この3月28日が最終回の第6回講義で卒業となるはずでした。しかし、第6回は4月16日に延期になっています。

講義といっても、いつものようにディスカヴァー社の会議室ではなく、zoomを使ったオンライン講義でした。これまでもオンライン参加者はいたのですが、今回は、全員がオンラインで、講師の干場弓子さんも自宅から参加。私は、自宅のネット環境が遅いので、誰もいない会社に出てきて、自席から参加しました。

講義内容は、予定通り、Chapter09/原稿整理、小見出しをつける、校正・校閲、Chapter10/プロモーション力:コンテンツを売る、というもの。

その前に、第4回の宿題についての講評がありました。

講評1時間30分、講義3時間30分の合計5時間に及ぶオンライン講義は、講師が一番お疲れになったと思います。ありがとうございました。

それにしても、オンライン講義を受けるのは初めてで、zoomを使ったのも初めてでした。

スカイプを使った会議とか、遠隔地とのテレビ電話会議は経験がありますが、zoomは軽快な感じがしますね。これまでの高いカメラや専用機器を使ったネット会議はなんだったのだろうかという気になりました。

5回の講義を通して学んだこと

詳しい講義内容は、いつものように割愛しますが、あとは最終回にこれまでの講義を生かして卒業制作としてプレゼンするだけなので、教わる内容はここまでです。

5回の講義内容は、公式ページにあるとおり以下になります。

カリキュラム内容
Chapter01/課題観、ベストセラーのつくりかた:編集者の仕事
Chapter02/表現とデザイン:パッケージのつくり方
Chapter03/企画力:企画を立てる
Chapter04/コミュニケーション力 著者との関係性、引き出し方
Chapter05/ロジカルシンキング、ストーリー:企画の具体化・構成
Chapter06/文章力:ライティング
Chapter07/コピー力:コピーライティング
Chapter08/デザイン基礎力:デザイン・ディレクション
Chapter09/原稿整理、小見出しをつける、校正・校閲
Chapter10/プロモーション力:コンテンツを売る

この10章を通して学んだ内容は、実に多岐にわたり、通して言えるのは、編集者とは、本を作るプロデューサーであり、書き手を育てる教師であり、最初の読者であり、時には、書き手に変わって書き上げる文章力が必要だということです。

編集者は新しい時代に突入している

プロデューサーとして、企画力が必要なのはもちろん、ブックデザイナーとデザインの話ができ、著者と内容の話ができ、印刷屋と本の形状や紙の風合いや製本の違いの話ができ、書店と本の売り方の話ができ、自らSNSを駆使したプロモーションを行い、時には著者と一緒に地方書店に行きイベントの司会もしなければならない。

これを称して、編集者は何でも屋、と昔は言ったのですが、今やそういうレベルではなく、一人出版社としての能力がなければいけない時代なのではないかと思い至りました。

そして事実、コルクの佐渡島さんや、ピースオブケイクの加藤さんといった、編集者の枠を超えたクリエイターのための場所を作る仕事をする会社を立ち上げ、活躍する方も出てきているわけです。

また編集者として独立した会社を作っているstokeの柿内さんも新しいタイプの編集者なのではないかと思います。

この人たちの能力については、間近で仕事をしている古賀さんがnoteに書いています。

柿内さんについては、私がした質問が物議をかもしたかもしれませんが、優秀な編集者というよりも、すごい方だと思ってますよ、本当に。

こうした方々の活躍とか、よく知らないのですが箕輪さんという幻冬社の編集者を見ていると、出版社という事業はとっくに解体されているのではないかという気になります。

出版社によるメディアミックスの時代

出版社が本を売るために映画を作ったという角川春樹さんという社長の時代は、出版社がプロモーションまでやることで驚かれました。

出版社は書店の店頭を飾ったりはしたかもしれませんが、多くの場合は、本をうるのは書店の仕事だったわけです。

それを自らメディアミックスを行い、出版社が映画も作り、自らスターを輩出(薬師丸ひろ子とか)することで本も売れるというやり方に世間は驚いたわけです。そして、角川春樹が築いたメディアミックスは、その後、コンテンツを売るという意味では、徳間書店のアニメージュの編集長だった鈴木敏夫さんによってアニメーションに展開され、スタジオジブリにつながるでしょうし、角川春樹さんの薫陶を受けた見城徹さんという人によって幻冬社という出版社の活躍にもつながっているように思います。

角川春樹さんの前にも、徳間書店の徳間康快さんだったり、プロデューサーとして本以外のものも作っている出版社社長はいましたし、また、出版プロデューサーと言われる仕事をする人たちも跋扈していて、その時は、彼らは編集者ではないと言われていたように思います。

人脈と顔が勝負の時代ですね。アナログな時代のプロデューサーは、多くの人を動かすカリスマ性も重要でした。

もちろん、人物が重要なのは、今も同じなのですが、大きく変わったのは、出版のデジタル化ではないかと思います。手書きの原稿を活版を拾って作っていた本の世界は、今や遠い昔で、分業化されていた出版業は、集約化されて大きく変わりました。

デジタル化によって、出版社の社長が陣頭指揮をとってメディアミックスを手掛ける時代から、編集者個人が采配を振るう時代に変化したのではないでしょうか。

デジタル化が出版と編集者を変えた

多くの仕事を大規模な資本を必要とせずに個人のレベルでもできるようになったのがデジタル化の革命的なところです。

デジタル出版ならば、小部数でもチャレンジできますし、その販売は、店頭を介さずにネットで可能になりました。プロモーションも直接読者とコミュニケーションを取る手法で売っていくこともできます。

大規模な資本を投入し、大規模なキャンペーンでメディアミックスを仕掛けて大量に売り捌く角川商法は今や誰も取ろうとしません。

個人の力を前面に押し出して、その魅力でファンを集め、小資本で確実な売り上げと回収を図るサロンシステムが可能になるプラットフォームが、このnoteを始め、いくつもできています。

作家自身もそうしたプラットフォームで直接ファンと接し、集客と収益を上げています。それをとらえて、出版社のライバルは作家自身になったという声もあるそうです。

私は、そういう時代だからこそ、編集者の役割が、そうした作家の後ろで糸を引く存在として重要であり、さらに、編集者自身にもサロンシステムを使いこなす能力が求められており、裏方とされた編集者が表に立って、自らの存在をプラットフォームとして、自分がプロデュースする作家及び出版物を推していく状況になっているのではないかと思うのです。

もちろんそのためには、多くのことに通じ、自ら使いこなせるようにならないといけません。

zoomの使い方とか(笑)

新たな編集者作りにぴったりだったディスカヴァー編集教室

そういう時代なので、マルチな才能を生かした編集者というような言葉でもてはやされる人が出てきています。でも、編集者はもともとマルチな才能が必要な仕事で、編集者としての訓練を積むと、いろんなことを学んでしまうものだと、個人的には思っていました。

ディスカヴァー編集教室は、干場さんという稀有な編集者であり出版社社長が、自らが考える編集者に必要な技術と考え方をまとめて伝えるものだったので、多分、いわゆる編集学校で編集技術を学ぶような内容とかけ離れているのではないでしょうか。行ったことがないので知らないですが。

それでも、本の企画の立て方や校正・校閲の具体的なやり方(校正記号とか)以上に、著者とのコミュニケーション力であったり、本を売るためのプレスリリースや店頭のポップのコピーであったり、SNSを使ったプロモーションのやり方であったりを講義し、専門的なことはゲスト講師の豊富な経験に任せるような構成は、他では見られないものだったろうと思います。

受講生に、自社の営業を含む出版社の人間やライターや著者も含めた出版関係の人間だけではなく、企業人やコミュニケーションを考える人がいたことは、ディスカヴァー編集教室の特徴だったと言えるのではないでしょうか。それは私も含め、干場ファンが参加したという側面もあります。

ある意味、干場サロンの原型が、この編集教室だろうとは思います。

ただ、それだけではなく、編集者に求められるものが変わっていることを踏まえた講義編成であり、時代を捉えた講義内容だったのではないかと、受講を終えた今、感じています。

干場さん自身が、会社を飛び出して編集者というか、何か形容し難い存在として、優れた個人として活動されるのも、きっとこういう時代の中で、サロンをつくるとか、プラットフォームになるような活躍をされるだろうと予測しています。

その原型にして原点を過ごすことができて、幸運であり幸福だったなと思います。








サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。