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接触確認アプリ、インストールしました?(追記あり)

この記事の中で話題にした接触確認アプリが発表されましたね。

民間での開発は全て無視して、国が開発するそうですが、いつになるのでしょう?

接触確認アプリとは

厚労省のサイトではこんなふうに説明しています。

本アプリは、利用者ご本人の同意を前提に、スマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して、お互いに分からないようプライバシーを確保して、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について、通知を受けることができます。

このアプリ開発の経緯については、これを読むのが一番という記事がこちら。

開発を受注したのは日本国内のベンダー。一部で「米マイクロソフトが受注した」と報道されたが、これは間違いだ。とは言え、マイクロソフトが無関係というわけではない。そこには多少事情がある。
実は、日本で使われるアプリのベースとなる部分は、個人が中心となったボランティアベースのプロジェクトで、オープンソースとして開発されたものを利用している。
そのアプリは、なぜオープンソースで開発されたのか? そして、そこに人々はどう関わっているのか、開発にかかわった関係者を取材した。

私のような素人が、云々することはなく、この取材記事が全てだと思いますが、なぜ、このアプリが話題になり、期待されつつも、なんとなく胡散臭いのか。

その辺を書いてみたいと思います。

技術は間違いない

このアプリは、Bluetoothで周囲にいる人の中に、感染している人がいるかどうかがわかるもので、個人情報は含まれていません。

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誰かまではわからないけど、PCR陽性の人と接触したから気をつけてね、という感じですね。症状に応じて考えてくださいというもの。

このアプリの基本技術は、アップルとGoogleが開発したものを厚生労働省が提供を受けて、開発されています。西田さんが記事中で書いているように、

スマホメーカーやアップル・グーグルはもちろん、政府にも蓄積はされないため、「自分の行動が政府やメーカーに筒抜けになる」という懸念は無用だ。

ということで、そこは信じて良さそうです。

ただ、その分、自分が接触した人のうち誰が感染者だったかはわからないし、いつ接触したかはわかりません。そのため、このアプリを持っていれば感染しないというものではないわけです。

まあ、そうですよね。空間除菌する装置を首からぶら下げていたって、ウイルスが消えるわけではないのに、アプリでウイルスを避けられるわけはありません。

ただ、このアプリで感染拡大は防げるのではないかと思いますし、アプリにはそれだけの技術が盛り込まれているとも西田さんの記事を読んで感じました。

じゃ、誰が作ったの

この記事にあるように、早くにボランティアベースで進んでいたコードが一旦棚上げになったり、アップルとGoogleが出てきたり、このアプリには紆余曲折がありました。

しかし、結果として、さらに大きな有志の集まりによって開発されたのです。

プロジェクト名は「COVID-19 Radar」。エンジニアを中心とした有志が集まった。アプリの仕組みや動作条件、ソースコードからデザインに至るまで、一般的なオープンソースプロジェクト同様、GitHubで成果が公開され、修正提案や協力依頼が交わされ、開発が進められてきた。
その性質上、プロジェクトに関わる関係者の数を正確にカウントするのは難しいが、日本とシンガポール、香港などを中心に200名以上の人々が参加しているという。
日本の有志エンジニアが、市民が互いに守り合えるための、プライバシーに配慮した行動変容アプリの開発を始めました。

この集まりの中心人物が日本マイクロソフトに勤めている人で、その同僚などが多く参加しているために、マイクロソフトが受注したという情報が流れたようですが、会社としてマイクロソフトが受注したわけではないのです。でも、支援団体にも名を連ねているように、開発環境とかサーバーとかで、きっちり支えているという、ちょっといい話になっています。

さらに多くの専門家が集まり、一つのアプリが出来上がっていく過程は、西田さんの記事を読んでいただきたいです。

でも、なんだか胡散臭い

作っている技術は間違いない、作っている人たちも信頼できそうだ。そこまではいいんです。

でもなんだか胡散臭いという感じが否めないのはなぜなんでしょう?

アプリは世界的に完成段階に来ていて、すでにスイスやドイツではダウンロードが始まっています。冒頭の安倍首相の発言のように、日本向けのアプリもリリース間近(6月17日時点)だそうです。ただ、本稿の最後にお話ししますが、このボランティアエンジニア集団が推進したアプリを安倍首相があたかも政府主導の政策であるかのごとく語っている点は、このアプリの未来に暗雲をもたらしているように、私には感じられます。

この暗雲というのは、日本だけではないようで、既に開発が終わって配布されている国でも起きていることのようなのです。

前述のように、このアプリに暗雲が漂っています。それはなぜでしょうか。たとえば、日本よりも先行してアプリが公開されたドイツでは、多くの自由主義者がこのアプリのダウンロードをためらっている様子です。
 そういった人たちは「アプリが信用できない」と言います。そしてこの発言は、本質的にはアプリを開発した善意のボランティアに向いているのではなく、政府に向けられているのです。

メルケル首相が支持されているドイツでさえ、アプリを信用しない人たちがいる。況や、日本に於いておや。

本当はいいアプリだとしても、政府が推奨すればするほど、多くの国民は「中国のように政府に監視されてしまうのではないか」という疑念を禁じ得ない状況にあります。そして、もし普及しなければどうなるかというと、おそらく政府が数百億円の普及予算を確保して、「○○協議会」なるものに普及キャンペーン事業を委託することになるのではないかと、国民は政府を疑っています。

これが個人の感覚だけならば、まだしも、新聞の社説にも書いてあったりして。

 同様のアプリの導入を進めるフランスでは、メディアの世論調査で55%が利用しないと答えた。公権力への警戒心の強い国民性からだという。信頼に足る政権なのかが問われているのだろう。日本での利用拡大もその点が鍵になろう。

一方で、こういう記事もあります。ドイツは順調なのか?

 ドイツは今週、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の政府による接触通知アプリを公開した。同国は外出制限を徐々に緩和しているところだ。ドイツ語で「コロナ警告」アプリと名付けられており、公開後わずか1日で既に650万件ダウンロードされた。欧州圏の他国より順調だ。

勇ましい記事ですが、この数字も満足なものとは言えないわけです。

 650万人というユーザー数は、このアプリが24時間でドイツの総人口の約7.8%を獲得したことを意味する。一方、フランスが6月初頭にリリースした「StopCovid」アプリは、これまでに総人口の2%しかダウンロードされていない。イタリアが2週間前にリリースしたアプリ「Immuni」は3.5%を超えたばかりだ。

そんなことを言っても、まだ1割にも達していないわけですね。先行するシンガポールでも2割止まりだったり、意外に伸びません。

そのため、業を煮やして、ハードを配りそうな勢いです。

シンガポールは3月、全国規模の接触追跡アプリ「TraceTogether」をいち早くリリースした。このアプリはBluetooth無線通信を使い、新型コロナウイルス感染症の患者に接触した人を当局が特定するのを支援する。ただし、国民には広くダウンロードされなかった。さらにAppleの「iOS」デバイス上では、アプリがバックグラウンドで実行される際にBluetoothが停止するため、うまく機能しない。

どこの国でも、政府が情報を握ることに懸念を示しているからのようです。

 世論調査によると、分散型を採用していても、このアプリに納得していない人はかなり多い。ドイツ公共放送連盟ARDによる最近の調査では、国民の42%が接触追跡アプリを使うと答えた一方、39%が使わないと答えた。

じゃ、どうするの

日本のアプリ開発が遅いという声もありましたが、先ほどの記事を見るとドイツも一度はアップルとGoogleの技術を使わない方向で行こうとして、反対にあったりして、やっぱり採用と紆余曲折があって、今週発表したばかり。

必ずしも、日本だけが遅れているわけでもないようです。

それでも、こうした政府への反発でアプリが普及しなければ、せっかく多くのボランティアが開発したアプリが無駄になってしまいます。

このアプリが有効に機能するには、6割の人が利用する必要があるとか。

西田さんの記事中では、そのことをUXを担当した児玉さんが説明しています。

「このアプリがほんとに役立つには、6割の国民が利用する必要がある、と言われています。利用者のことを考えると、アプリの中だけでなく、アプリを見つけて認知してもらう、という“体験”も重要になります。
その結果、起きる行動変容についても、カスタマージャーニー(注:利用者がどう行動するかを想定すること。アプリやサービス開発では、それらの想定が重視される)が必要です。信頼を得るべく説明をしていかないと、アプリの利用は広まりません。そしてそれは、チームの範囲を超えることでもあります」(児玉さん)

確かに、安倍さんが説明したり、菅さんが利用を促したりするのは胡散臭い。厚労省の作ったアプリをスマホに入れるのはなんだかダサい気もする。

そういう反発はあると思うんです。だからもう組み込んじゃうという発想もあるようです。

アプリの段階では「6割」に到達するのは難しく、2020年末頃に予定されている、スマホOSそのものへの組み込みによる「標準搭載化」まで無理ではないか、という予想を立てる関係者もいる。

でもそれもどうなんでしょう。自主性を重んじることと、ある程度の不自由や情報提供を覚悟した上で政府に委ねることの間で、私たちが、どういう社会を選ぶか迫られていることを、コロナウイルスは明らかにしたのではないかと思います。

マイナンバーと口座が紐づいてないと緊急事態ではお金も配れないし、法律で禁止事項を提示できないと明確な保証もしづらい。それができる国とできない国の違いは、自由という言葉の認識の仕方の違いではないかと。

そこまで気張らなくても、アプリ開発が多くの有志の手でなったことを評価するのならば、政府・厚労省の胡散臭さに眉を潜めつつも、このアプリを使ってみるという寛容で、彼らへの感謝を示すことが必要ではないかとも思うのです。

西田宗千佳さんは、記事をこう締め括っています。

しかし、それだけでなく「多くの人にアプリの本質を理解して、協力してもらうこと」がやはり重要なのではないか。多くの人々が開発コミュニティに参加したのも、そうした意識の表れである。

そして、筆者がこの原稿を書いているのも、例外ではない。

アプリがなんとなく信用できないというダイアモンドの記事を書いた鈴木貴博さんは、こう締め括っています。

このままでは、ボランティアで頑張ってくれたエンジニアたちの努力が無になるか、予算に群がる大企業の餌食になりかねないということを、私は心配しているのです。

エンジニアに報いたい気持ちは同じ。

だったら、やっぱり、インストールじゃないですかね?

追記:なかなかダウンロードしにくい。

・App StoreまたはGoogle Playで「接触確認アプリ」で検索してインストールしてください。

この記事がリンクを貼っていました。


私は、Appstoreの「おすすめの新着」で見つけました。

追記2:詳しいQ&Aを西田宗千佳さんが書いています。

迷っている人は、こちらをどうぞ。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。