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東京五輪開会式とはなんだったのか

直前までいろんな混乱があった東京五輪開会式。

視聴率に貢献した炎上マーケティング

あそこまで色々言われたら、かえって見たくなるのが人情というものです。

23日夜にNHK総合で生中継された「東京2020オリンピック・開会式」(後7・56~11・51、235分)の平均世帯視聴率は56・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが26日、分かった。同じくゴールデン帯(午後7~10時)で放送がスタートした2008年北京五輪の37・3%(8月8日後8・55、255分、NHK総合)を大きく上回り、前回1964年東京五輪の61・2%(10月10日後1・43、147分、NHK総合)に迫る驚異的な数字。瞬間最高視聴率は61・0%(午後8時25分、同8時26分、同8時47分)に達した。

だからこそのこの視聴率だったのではないでしょうか。

反対していながら視聴率が高いとはなんだとか、色々な声があるようですが、あれだけの炎上マーケティングはなかなかありませんよねえ。

必要なのは三つだけじゃ無いかな

もう多くの人が、その中身の評価は書いているので、それはそういうものを見たり見なかったりして欲しいですが、私は、開会式に必要だったのは何なのかを考えながら見ていました。

 式典責任者の日置貴之氏は「多様性を認め合う『ダイバーシティー&インクルージョン』、スポーツが持つ本質的な価値。そこに重点を置いた」と言う。

全体として九つのセクションからなる開会式だったそうです。

分解していくと、開会式に絶対に必要だったのは、国歌斉唱と選手宣誓、開会宣言ぐらいなんじゃ無いでしょうか。

国歌斉唱と宣誓

国会斉唱はMISIA。これは素晴らしかったと思います。

君が代は難しい曲で、歌い出しのキーを聴いて、えーこれで大丈夫なのと思ったらば、そんな素人の心配の遥か上をいく素晴らしい歌声でした。

選手宣誓は日本選手団主将の山県亮太と副主将の石川佳純だったんですが、今回、選手だけではなく、コーチや審判を代表する方も宣誓していました。

これまで気にしてなかったんですが、今回が初めてではないんですね。

選手宣誓は1920年のアントワープ大会から実施された。審判宣誓は1972年の札幌大会から実施されている。そして2012年のロンドン大会からコーチ宣誓が加わった。

いかにこれまで開会式をちゃんと見てなかったか。

札幌大会から審判の宣誓があったなんて知りませんでしたよ。

ドローンは二番煎じでは無いの?

そして五輪のマークや地球が、1824台のドローンによって空中で表現されました。最先端テクノロジーを使ったと感じたものでしたが、実は平昌五輪でもドローンは出てきましたね。二番煎じという声は無いようですが。

使われたドローンは1824台。米Intelの「Shooting Star」システムだ。

平昌の時は、1218台だったそうです。

大幅に上回ったので、ギネス記録になるんでしょうか?

今回、予算削減で多くの演出がなくなったそうですが、その中でも、このドローンは残したようです。インテルが五輪スポンサーなので安くしてくれるんでしょうか?

Intelはドローンによるライトショーをパッケージで請け負っており、例えば200台のCLASSIC DRONEによるショーであれば価格は9万9000ドル(約1100万円)だ。ドローン群で動きのある立体感を実現するカスタムソフトウェアの開発、航空承認や安全性の確認、プロジェクト管理、セットアップなどが含まれる。

今回は、1800台なので単純に9倍すると、ざっと1億円ということになります。

これをタダで受けたとしても世界に配信される中で、見事な宣伝効果ですね。2018年にはすでに匂わされていたようですけど。

大きなイベントでドローンが定番になりそうです。

それにしても、日本企業の独自技術の出番が感じられず、少し寂しい気もしました。

あいうえお順の選手入場で思った良し悪し

選手宣誓の前には、当然選手入場があったわけですが、毎回思うんですけど、これ必要でしょうか?

もともと、次の日に競技がある選手は影響もあるので出ませんし、今回は、コロナ禍でもあるので、人数も少なかったようです。それでも、選手間で距離を取るので列が長くなり、2時間もかかったわけです。

最初の国が会場内で待っていること、最後の国が会場外で待っていることを考えると、無観客の今回はそんな負担をかける必要はなかったようにも思うんですが、どうなんでしょう?

毎回やるから今回もやるんじゃなくて、やらないという選択肢はなかったのかなあ。

ただ、良かったと思ったのは、入場国名がアルファベット順ではなく、あいうえお順だったこと。日本以外の国の方にはまるでチンプンカンプンでしょうが、これで、これまであったあらゆる国際大会とは全く違う順番で入場することになり、海外の方からすれば、前後に見慣れない国が入って新鮮だったんじゃないかなと思います。

そして何よりも、日本の外務省が呼んでいる国名を使ったことで、チャイニーズタイペイではなく、台湾という国名を使うのに無理がなかったんじゃないでしょうか。ABC順のままだと、やはり国名表記はTAIWANとするわけにはいかず、チャイニーズタイペイという中国に配慮したものにしないといけませんが、ひらがなで書けば「たいわん」という国名が使いやすい。

これは大英断だったと思います。今後、中国との関係よりも台湾との関係を重視する外交になるのでしょうか。最近アメリカが台湾推しな影響なのでしょうか。

どういう理由であれ、順番を後押しするかのように和久田アナの「台湾です」という司会も良かった。東日本大震災以降お世話になってきた台湾の皆さんにお返しができた思いがしました。

台湾選手団の入場行進を巡っては、NHK中継の和久田麻由子アナウンサーが「台湾です」と紹介し、多くの台湾人を感動させた。中国の圧力を背景に、台湾は「チャイニーズタイペイ(中華台北)」名義での国際スポーツイベント参加を余儀なくされている。

後はグタグタと頑張りのミルフィーユ

入場行進の行進曲がドラクエだったとか、その辺は、多くの人が書いているから割愛しますが、新しい曲を作らなかったのは何故だったのかは気になります。古関裕而を超える行進曲をかける作曲家はいないということなんでしょうか。またイマジンとボレロ以外の選択肢はなかったのでしょうか? 冒頭の4分間の曲とか覚えてないんですけど、どうなんでしょう?

その他のコーナーは、演出として本当に必要だったものがあったようには思えません。一つ一つの意味合いもクオリティの高さも分解すれば理解可能ですが、トータルな意図や世界観が見えないのは、総合演出家不在の影響でしょうか。

それにしても、バッハ会長の挨拶は長いし、真矢みき頭領はなんだか可哀想だったし、なだぎ武のテレビクルーコント、劇団ひとりと荒川静香さんの点灯コントは会場演出の舞台転換とテレビ中継用の時間稼ぎだったとしても意味不明だったし、聖火の点灯には夜中なのに子供は出てくるし。

何よりも、天皇陛下の開会宣言で慌てて立った菅首相と小池都知事は眠かったんですかね? バッハ挨拶なげーよ、と思って油断したんですかね。

細かいところは運営がカバーできたかも、という気もしますが、それも酷な話かもしれません。あれだけ運営上部でいろんなことがあっても、最後まで全うした現場の力は日本らしさの集大成という気もしました。聖火台が割れて階段が出てくるところが、人力だったとか知ると余計に。

トップがグタグタで、現場の頑張りでなんとか辻褄合わせるのは、今の日本を象徴しているのかもしれませんけどね。

ある意味、日本の現在を細切れに見せてくれた式典だったと言えるかもしれません。

これでますます河瀬直美監督の記念映画が楽しみになりました。

東京五輪の公式記録映画の監督に決まったのは2018年の秋です。バスケットボールで国体に出場したりで、スポーツはライフワークとして私の横にあり、自分事として引き受けました。運命だと思いました。撮影のテーマは、つながりです。五輪のようなメガイベントは1人じゃ出来ないし、根本にあるつながりでより良い未来に向かっていくような映画をと思っていましたが、コロナの影響でコンセプトが大きく変更になりました。世界中を飛び回って取材したい選手に直に会い、取材することが出来ないジレンマ…でも、そこでこそ見えてくる物語があり、それをテーマにしていきたいと思っています。
23日の開会式、河瀬氏は東京のオリンピックスタジアムの舞台裏で、1万人余りの選手たちがほぼ空席の競技会場に足を踏み入れる様子を記録する。テレビでは見られない映像を押さえるのが目的だ。開会式後は芝生が入れ替えられ、陸上競技の準備が行われる。当然、河瀬氏はそこで夜通しカメラを回す。
人目に触れない仕事をこなすこうした人々の支えなしに大会の実現はあり得ないと、河瀬氏は説明する。自分は事実を撮るつもりだとし、そうすることが自分にとって多くの意味を持つと付け加えた。

追記:天皇陛下の開会宣言の時に、菅首相の起立が遅れた問題は、バッハ会長の挨拶のせいだったようです。

組織委の高谷正哲スポークスパーソンによると、この件について内部で確認したところ「台本では、天皇陛下の開会のご宣言の際に『皆さん、ご起立ください』というアナウンスを予定していた」という。
しかし、その前にあった国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長のスピーチの最後に、バッハ会長が「開会宣言をお願いします」と発言したことで「そのままの流れで開会宣言に入ってしまい、アナウンスするタイミングがなくなってしまった」と高谷氏は説明した。

バッハ会長の挨拶文の事前チェックをしておくべきでしたね。台本無視の長口舌で、勝手に陛下の開会宣言まで引き出したとは、ちょっと問題だなあ。

多分、言わんだろうけどねえ。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。