見出し画像

伊集院光と養老孟司という組み合わせだけで買いでしょう:「世間とズレちゃうのはしょうがない」PHP研究所

この二人の対談なら間違いないと思って買ったんですが、やっぱり間違いなかったです。

世間からはじき出されないことを願う理論派・伊集院光と、最初から世間からはみ出している理論超越派・養老孟司。博覧強記でゲーム好きという共通点がある二人が、世間との折り合いのつけ方を探ります。
見た目が大きくて、子どものころから同級生との違いをひしひしと感じ、「世間からはじきだされることがこわかった」という伊集院さんは、不登校になった理由や落語の道に進んだわけを明かしつつ、「人間はそもそも群れの中で生きる動物。『他人に優しくなるほうが得』ということになるんじゃないかな」と語ります。
一方「自分ははじめから世間から外れていた」と語る養老さんは、「都市においては、意識で扱えないものは排除されます」という都市論・世間論を展開。さらに、たまには世間から外れて世の中をながめてもいいんじゃないか、と世間から抜け出す方法を提案します。
抱腹絶倒のトークから、世間とズレながら生きていくヒントが得られる一冊です。

理屈王・伊集院光と唯脳論・養老孟司

博覧強記というよりは雑学王というのがふさわしい伊集院光と、孤高の虫博士というか死体から世の中を見る唯脳論の養老孟司先生の対談本。

二人とも自分好みの理屈っぽい人なので、これは面白いに違いないと思って買って、読んで、確かに自分には面白かったけど、これ、本当に面白いですか、と人に聞きたくなる本でした。

言ってしまえば、伊集院さんが、NHK「100分de名著」で見せる専門家へのツッコミというか、ストレートな疑問を自分の体験や周りの話なんかを含めて長々と喋って養老先生にぶつけ、養老先生が身も蓋もない返答をするという本です。

その中で、伊集院さんの本音というか、普段ラジオでも話さないような自分の生い立ちや、加齢による思考の変化、志向の変化を、養老パイセンにぼやき、諦めろと言われ、そんなもんすかねえ、と納得していく過程を描いた本とも言えます。

なので、お笑いについて伊集院さんが最近思っていることが出てきたり、世代論になったり、なぜラジオなのかを考えたり、その切り口が面白い人には楽しめます。

そして養老先生の相変わらずの身も蓋もない回答を笑える人には面白いのですが、時々、養老先生に真面目に答えろと迫る人がいるので、そういう人には何のことかわからないのではないかという話になっています。

養老先生にすれば、真面目とは何か、世間とは何か、死とは何か、そういう時に問う側が前提としていることが、本当に前提としてふさわしいのか、そこを問うているわけです。その問いは全て、人工物なのではないか、つまり人間の脳の中だけで生まれ、いじくりまわされている、吉本隆明的に言えば、共同幻想、養老先生的に言えば、ヌエのような「脳化社会」のものなのではないか。それは自然の側から見れば、考えるに値しないものかもしれない。

二人に共通するのは、社会に対するどうしようもない「違和感」を考え続けているということでした。

違和感とズレと塀

伊集院さんは、違和感の元となるものに理論で迫り、徹底的に理論武装して人生を戦ってきた。

養老先生は、違和感があることを受け入れ、違和感がもたらす「壁」とどう戦うかを言葉にしてきた。

この違和感こそが、本書でいう「ズレ」なのですが、違和感の持ちようによっては、その姿は、劣等感にも優越感にも転移しやすい「壁」でもあります。

世間との境を「塀」と養老先生は呼び、塀の上を歩くのがいいと言い、塀は動くとも指摘します。

伊集院さんは、この塀の上の内側を歩くのが、お笑いの仕事だと指摘します。

本書で感心した点の一つは、伊集院さんが最近のお笑い芸人、つまり後輩たちのことを、お笑いの学校に行ってトップを取り、お笑いのコンテストでトップを取るために傾向と対策を学び、お笑い偏差値を高めようとしている、と指摘するところです。

お笑い芸人は、世間から外れているアウトローがやるものではなく、偏差値の高い傾向と対策が学べる人たちがやるものになっているものに変わってしまったわけです。

お笑い芸人の高偏差値化が進むわけです。勉強ができないと売れないわけですからね。

この辺りは、さらに書いてみたいところなのですが、伊集院さんが身近な後輩芸人を見ていて感じたことは、確かでしょう。

そういうトピックが、つながって、一つの現代社会を浮き彫りにするような話になっていくのですが、AIや過労死や本人確認やら、アレっと思うことに、養老先生が身も蓋もないことをいうという構造は変わりません。

最後は、シーラカンスは希望だというのですから、何の話なのでしょう。

私が見かけた伊集院さんと養老先生

ラジオについては、伊集院さんはこんなことも語っています。

ラジオは古いからいいんだそうです。ネット時代だからこそラジオが受けるのはなぜなのか。その答えも本の中で話しています。

伊集院さんと言えば、ニッポン放送からTBSラジオヘ移籍した時に、周波数と同じ体重になろうという企画で、1242のニッポン放送から954のTBSなので120キロから95キロにダイエットしている頃に、私、TBSの中でお見かけしたことがあります。

ぐったりされていました(笑)

今は、もうTBS越えの体重でご活躍ですけどね。

養老先生は、東大解剖研に在籍されていた頃に仕事でお邪魔したことがあります。その頃から話す中身はほとんど変わらないのですが、世間がどんどん変わっていったように思います。

そんな二人の、対談本は、誰かの心を和ませるに違いないと思いました。

https://amzn.to/3oHDR9C

https://amzn.to/39ZDwLa










サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。