実際に会社を作って勉強になったこと

零細とはいえ会社を作って細々と自分で商売をすると、普通に会社勤めしているだけでは経験できないことを経験し、いろいろと勉強する機会がありました。そこで、今回は私の個人的な経験をシェアしたいと思います。

……全部書いてみて気づいたのですが、全体的にロクなことがないです。何の見通しもなく「ちょっとやってみたい」程度で始めると、最初のクリボーに当たって死ぬだけですので、やめておきましょう。

謎の「コンテンツ制作会社」から電話がかかってくる

会社を登記すると、登記簿謄本が公開されます。コンテンツ制作会社は日々それをウォッチし、起業直後の会社を狙って「取材させて欲しい」と電話をかけてきます。

なんでも「御社のように新しいベンチャー企業が、どんなビジネスを進めようとしているかを取材し、コンテンツ配信している」と。そして、取材として対談する相手はなんと芸能人らしく、弊社の場合は杉田かおるとのことでした。おばちゃんかよ。

キャストに不満が残るとはいえ興味深かったので、その場で「いいですよ」と快諾しました。「コンテンツ化のための取材」ならもちろん協力しますよ。宣伝になるかもしれんし……「杉田かおると対談した」なんて話のネタくらいにはなるじゃないですか。相当微妙だけど。

しかし、長々と電話した最後に「取材料・掲載料として7万円になります」ときた。

なるほど。ここでようやく合点がいきました。これは「取材」と称して誰も見ないコンテンツを形式的に作り、起業直後の会社から小銭を巻き上げる貧困ビジネスであると。

「取材」という言葉に少しでも踊らされた私はバカですね。さすがに自分の不見識が情けなかったです。

丁重にお断りして電話を切った後、その会社のウェブサイトを確認したところ、「対談する芸能人一覧」が載っており、「最近テレビで見なくなった泡沫芸能人」が見事にずらりと並んでいました。

そうか、こういう人たちはこういう形で自身の中途半端な知名度を、謎の会社で換金してるんだなと。仕事ないとつらいよね、分かるよ、その気持ち。そう思いながら、ブラウザをそっと閉じたのでした。

行政関係機関からメールが飛んでくる

これは私の専門性が特殊だからなのですが、行政関係機関からメールが飛んでくることがたびたびあります。

例えば、政府系の機関から「民よ、我に知財戦略を授けよ。無料で。満足できたらその後の出願代理の仕事を与えてもよい。見積りを出せば検討してやる」という趣旨のメールを賜りました。

出願代理は当初から引き受けるつもりはなかったのですが、当時は何でもいいから仕事が欲しかったのでおとなしく相場より少し低めの見積りを出したところ、

「うつけ者!!名もなき民にお上が仕事をくれてやろうというのに!!僭越も甚だしい!!」

という感じで激しくお叱りを受けました。古い人脈をたどって中の事情を探ったところ、どうやら先方は私が出した見積価格の半分以下を想定していたらしく、いや、それ、マジで相場だから、というか低めだから、そんな儲からない消化試合みたいな仕事、誰がやるねん。

また、別の某政府の専門機関から「民よ、いま下々で話題の人工知能とやらを教えろ。2時間で。コンパクトに」という趣旨のメールを賜りました。

本当に人工知能のことを知りたければ、大学の研究者みたいな「本物のプロ」に依頼する方がいいと思うんだけどな……と思いながらも、参加人数をヒアリングし、過去の経験を踏まえて激安価格で見積りを出したところ、

「下々はお上の事情を知らんのか。忖度できぬ奴め……」

と呆れられました。いや、それ、ボランティアですよね?
コネクション作りと割り切って請けようかとも思ったのですが、面識のない方角から飛んできたメールに反応しても徒労に終わる公算が大きかったので、丁重にお断りしました。

お上もいろいろつらいよね。立場とかあるもんね。分かるよ、その気持ち。そう思いながら、メールをそっと削除したのでした。

「信頼関係がすべてである」と痛感する

「相談させてほしい」とか「話を聞かせてほしい」とか、そういうふわっとした依頼がくることがあります。

要するに、何かに困っているので、というか何に困っているかすらよく分かっていないので、藤田の意見を聞かせてくれ。そういうことです。

お金にならないことは明らかなのですが、信頼できる筋からご紹介いただいた依頼であれば、すべて協力しています。信頼筋の紹介だと先方の志・人格がとても高く、そういう人々と話をするのは私が純粋に楽しいからです。

そして、「わざわざ時間を割いてもらった」ことを深く感謝し、「一方的に意見を聞かせてもらったのに特段のお礼ができずに申し訳ない」と心苦しさを表現し、その後は人や仕事を紹介してくださったり、一緒に飲みに行ってくれるなど懇意にしてくださったり、とてもお世話になることが多いです。

ところが、そうでない人がたまにいます。「困っている」と言うから話を聞きに行ったら、こちらから情報を引き出すだけ引き出して知らんぷりするとか、当初の約束を反故にして適正な報酬を払わないとか……ああ、めんどくさい……相互に信頼できる根拠がどこにもないと、こうなります。

「人間は信頼関係がすべてである」。組織のなかで同僚としか接点がなければ、この認識は希薄になりがちなのですが、独立すると本当にこれを痛感します。

利害が直接絡む仕事においては、信頼関係の重要性はもっと高まるので、人から信頼されるように、そして相手からの信頼を毀損しないように、常に気を配る必要があるんですね。

まあ、オトナとして当然のことなんですけど、とても勉強になります。
1に信頼、2に信頼、3,4がなくて、5に信頼。ほんとこれです。

メガバンク法人口座のクソっぷりに落胆する

起業当初に「ウチの銀行口座はメガバンクで開設しよう」と考えました。取引先に対する信頼醸成につながるかもしれないからです。ちなみに、弊社のメインバンクは、赤い看板の都市銀行です。

まず、法人口座を開設するまでが大変でした。これは、法人口座を犯罪用途で使われないように、警察が取り締まりを強化していることが原因として1つあると思います。

それにしても、
・なんで2回も虎ノ門まで足を運ばないといけないんだ?
・何回ハンコを押させて、住所氏名を書かせるんだ?
・猜疑心丸出しで下から睨め上げるように見るなよ気持ち悪い!
・開設の申請を出して実際に開設されるまで2週間以上かかるとか、何の嫌がらせやねん……。

それから、オンラインバンキングがウンコです。

まず、「パスワードの定期変更はいらないよ」「IEはもう使っちゃダメだよ」という総務省の見解を真正面からガン無視しています。銀行は日銀と財務省の方を向いているので、当然と言えば当然なのですが。

そして、「どんな悪意を持って設計したら、こんなUIを作れるんだ?」と疑問を持たざるを得ない画面を見せつけられます。
よーし、お父さん、アクセスカウンターとか掲示板とか置いちゃうぞー!
というレベルです。インターネット黎明期の個人ホームページかな?

さらに、法人はオンラインバンキングを使うのに、月額利用料が発生します。しかも、入出金明細を確認できるのは直近1ヶ月のみ。しかも、オンラインバンキングなのに、夜は使えないとかいう謎仕様。

この仕様を決定した人は、激烈に世の中を憎んでいるのだろうかと思いを馳せる瞬間です。きっと来世はミジンコくらいの下等な微生物に転生すると思います。

オンラインで明細を確認できないので、ATM での記帳が重要になります。ところが、記帳をサボって期間が空くと「合計記帳」という刑に処されます。恐るべきことに、その期間は入出金された金額の合計のみが記帳され、明細が記帳されないのです。

この過酷な刑は、合計記帳された期間の明細を出すために、
(1) 書類に必要事項を記入し、
(2) ハンコを押し(もちろん社印)、
(3) 窓口に提出し、
(4) 2~3営業日待ってから、
(5) 紙に印刷された明細を窓口まで取りに行かねばならない
という、大変な労苦を強いられる重い刑罰です。会社決算の直前にこの刑に処されると死にます(実際死んだ)。

私は窓口でメガバンク行員から「記帳をサボるとこうなるのだ!今後はゆめゆめ忘れるでないぞ!ガハハハ!!」と後ろから捨て台詞を浴びせられ、枕を濡らしました。世の中にこんな理不尽あろうとは、嗚呼、神代もきかず竜田川……。

皆さん、メインバンクを決めるときは、「法人口座 おすすめ」などで徹底リサーチしましょう。

銀行のブランドはどうしたって?
そんなくだらないことを気にする連中とは取引しないようにしましょう。

自分の会社から金を出せない

自営業(フリーランス)であれば、私用・事業用のサイフが同じなので何を気にする必要もないのですが、法人にすると「自分」と「会社」という2人の人格ができ、それぞれ独立したサイフを持つことになります。

会社のサイフに事業収入が入ってきても、それを勝手に自分のサイフに移し替えることはできません。他人のサイフだからです。

「いやいや!たった1人の零細会社で、オーナーは私やん!その事業収入は私が稼いできたんやん!」と言っても通りません。他人のサイフです。

ではどうするか?
「役員報酬」という勘定科目で自分自身に報酬を払うしかないんですよね……。

しかも、その額は期の途中で変えることができないという縛り付きです。つまり、「今月は儲かったから多めに報酬を出そう」とか「今月は厳しかったからカットするか」とか、そういう恣意的な変更はダメなのです。

ちなみに、役員報酬の額を変更する場合は株主総会の決議が必要です。もちろん、弊社は私1人のオーナー会社ですので、年1回の株主総会は全オレ賛成で即終了します。

で、「会社のサイフは他人のサイフ」であり、役員報酬の恣意的な変更が許されないということは、要するに、自分で稼いだ金がそこにあるのに(原則として)根拠なく金を出せないってことです。聞いてないよ!

……とはいえ、会社の販管費は私のサイフと事実上同じですので、そこは会計のマジッk……ゴホンゴホン!

いや、しかし、めんどくさいと言いながら自分で会計をやったおかげで、実にすっきりと会計のカラクリを理解できました。習うより慣れろ。

会計なんて本を読んでもさっぱり理解できませんが、会社を作ると嫌でも身銭で理解できます。管理会計を理解できずに悩んでいるマネージャーは、レッツトライ!

まとめ

あくまで零細のまま細々とやってきましたので、私が経験したことなど鼻くそレベルだと思うのですが、ふと振り返ると、いろいろと勉強になったことが多いなとしみじみ感じる次第です(オトナの事情でここには書けないこともたくさんあります)。

長い人生、自分で実際にやってみなければ分からないことはたくさんあります。「人生は強化学習」。かつて大学で強化学習を研究していた私は、そう確信しています。ホントです。効率よく教師あり学習しようなどとヌルいこと考えてんじゃねえぞ!

さて……オチに困ったので、ごまかすために今回もオモシロ動画を置いておきます。この動画は本当に素敵ですね。私はこれを見てアコーディオンを習いたくなりました。渋谷でこの先生から習えるらしいです。おわり!


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藤田 肇

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