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普通の少年がレッドウェーブのコーチになるまで/後藤祥太アシスタントコーチ①

誠実さは大きな推進力になります。
たとえ苦難や苦悩に阻まれそうになったとしても、
誠実であり続けることで、
新たな道は開けてくるものです。

富士通レッドウェーブの後藤祥太アシスタントコーチ。
ここでは親しみを込めて「ショウタさん」と呼びます。
そのショウタさんの人となりを知っている人は少ないかもしれません。
試合会場で見せる笑顔だけではない、
誠実さと熱い心で、
今のレッドウェーブに欠かせない、
チームを支える大切な屋台骨のひとりです。

考えることで立ち向かった少年時代

ショウタさんは1993年生まれというから、宮澤夕貴選手と同学年です。
和歌山県出身。
選手としては、これといった実績はありません。
中学生のときに県選抜チームに選ばれる寸前までは行きましたが、
最終的には落選。
全国大会のコートに立つことはできませんでした。

高校も地元の、いわゆる進学校に進み、
記憶に残る最高成績は県でベスト4。
身長が高いわけでも、運動能力に長けているわけでもありません。
いわゆる普通の高校生。
「アース(宮澤夕貴選手)やルイさん(町田瑠唯選手)が出場していたウインターカップをJ-SPORTSで見ていたし、ヒカルさん(日下光アシスタントコーチ)のことも、「月刊バスケットボール」で組まれていた特集記事を読んでいたくらいです」


小学校の卒業文集にかいた将来の夢は、
サッカーの監督になること。
バスケットをしながら、サッカーも好きで、
テレビでFCバルセロナ(スペインの強豪サッカークラブ)の試合を見ながら、
その戦術をノートに書き出していたそうです。

中学のバスケット部に入ってからも、
顧問の先生に戦術的なことを聞いては、
チームの戦術や、セットプレーなどをデザインしていました。
身体能力では敵わない。
でも考えることで立ち向かえることもあるのではないか。
県選抜の一歩手前まで進んだのも、それが功を奏したのでしょう。

ある中学生との出会い

大学は「教員になって、バスケットを教える」を目標に、
東京学芸大学に進みます。
同大学の男子バスケット部に入ったのも、
バスケットのコーチングを学びたかったから。
東京学芸大学は学生主導でチーム運営をおこない、
ヘッドコーチも学生が務めていました。

ショウタさんも2年生まではプレーヤーとして在籍し、
3年生から、当時の上級生にお願いしてヘッドコーチを務めたと言います。
1年目は惨敗。
関東4部リーグに属していたチームを5部リーグに落としてしまいました。
翌年、チームを4部リーグに再び昇格させて、卒業します。

その後は大学院に通い、コーチング学や運動学を学びつつ、
他のチームをサポートしていきます。
その1つが都内にある実践学園中学です。
同中学は全国大会で2連覇を達成したこともある強豪校です。

ここで、ショウタさんは今につながる運命的な出会いを果たしています。
テーブス流河さん。
BTテーブスヘッドコーチの息子さんです。
「彼はすごく一生懸命で、何よりバスケットが大好きな子でした。僕が彼らにトレーニング指導をしているときも、彼からはずっと見られている感覚があったんです。『あ、この子はちゃんと見ているな』と感じたのを覚えています。動きの一つひとつをしっかり見て、それを的確に再現しようとしていたんです」
その流河さんの目こそが、のちにショウタさんの未来を変えていくのです。
しかし、当時はそんなことになるとは思ってもいません。

誠実さが開いたレッドウェーブへの扉

2019年、ショウタさんはその年からB.LEAGUE(B3)に参入した
ベルテックス静岡のヘッドコーチに就任します。
しかし10位と低迷。
同シーズン中、同チームのアシスタントコーチとなり、そのまま退団します。


転機が訪れたのは2021年のこと。
BTテーブスヘッドコーチからメッセージが届いたのです。
「アナリスト兼スキルコーチをできる人を探しているのですが、興味はありませんか?」
ほかのチームからもコーチのオファーが届いていたのですが、
もう一度コーチングを学び直したいと考え、
それらのオファーを保留にしているときでした。
「富士通という、タイトルに挑戦できて、日本代表クラスを含めいろんな選手がいるチーム。さらに言えば、女子のチームを教えたことなかったので、そうしたことも含めて自分のキャリアとしてすごくチャレンジになると思いました。自分の足りない部分を見つめ直していた時期でもあったので、その役割からもう1回チャレンジしようと考えて、『ぜひやらせてください』とお願いしました」

なぜテーブスヘッドコーチはショウタさんに目を付けたのか。
そこに流河さんが絡んでくるのです。
ショウタさんがテーブスヘッドコーチから聞いた話だと、
アナリスト兼スキルコーチを探していたテーブスヘッドコーチが息子たちに
「誰かよい人材を知らない?」
と聞いたとき、流河さんがショウタさんを紹介したというのです。
流河さんが見ていたのはショウタさんのワークアウトでの動きだけではなく、
中学生相手でも、彼らの成長のためにとトレーニングメニューを考え、
彼らと真剣に向き合ったショウタさんの誠実さもあったのでしょう。

選手はまだまだうまくなれる

初めて指導する女子バスケットは、驚きを含んだ新鮮さがありました。
「身体能力の違いなどありますが、バスケットボールという視点で言えば、男子と変わりはありません。ただコーチングの視点で言えば、男子と女子とでは大きく異なります」
男子はバスケットに、ひいてはスポーツに向ける好奇心が強く、
自分で動画などを見て、モノマネからスキルを取り入れる選手が多い。
しかし、女子は教わったことはしっかりやるものの、
教わること以外への興味関心が、やや薄い傾向にあると感じたのです。
「1年目はドリブルのレッグスルーさえできない選手がいました。話を聞くと、小さい時に教わったり、チャレンジした経験がないからできないのだと。その答えに驚かされました。そもそもの出発点が、多くの男子と女子とでは違うんだなと」

実際、レッドウェーブの選手たちの練習態度はまじめで、
チーム練習前後のシューティングも欠かしません。
それでもチームとしてうまくいかないことがあるのは、
言われたことはしっかりとできるようにするけれども、
そこから先を自分で広げようとしない選手が多かったからかもしれません。
そういった発想さえなかったのでしょう。

ショウタさんはスキルコーチを引き受けるにあたって、個人的な目標を立てていました。
「選手たちから、『富士通レッドウェーブに入ったら、うまくなるよ』と言ってもらえるチームになれたらいいな、と考えていたんです」
高校、あるいは大学を卒業しても、選手はうまくなれる。
伸びしろは、選手たちが諦めない限り、途絶えることはありません。
それを結果で証明したい。
ショウタさんはそう考えていたわけです。


入団から3年目を迎える今も
その考え方は変わりません。
「僕のなかにはすべての選手に対して『今シーズンはこれぐらいできるようにしたい』というテーマがあります。それは目に見えやすいところもありますし、目に見えにくいところもたくさんあります」
そうして積み重ねていった成果が、今シーズン、いくつも現れてきています。


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