「似ることは似ないこと」

大阪国際芸術祭。「道を外した書」の展示に足を運んだ。思いもよらず面白かった事。

井上有一という書家、その弟子4名の作品が展示されている。僕は予備知識無しで一通り見て回り、二周目に作家の背景や解説を見ながら回った。まず面白かったのは、一周目で惹かれた作品の多くが井上師匠のモノであったこと。師は偉大なり。僕にはなぜかすらわからない。理由がわかるレベルにさえない程に一流との距離は遠い。しかし、確実に言えることは、良いモノは誰が見ても良いってこと。背景や想いを知ることは作品の良さを押し上げる効果はあれど、ベースラインを押し上げることは無い。結局は、相手を痺れさせたかどうか、でしかない。仕事で飯を食うとはそういうことだ。

次に面白かったこと。弟子4名の作品はそれぞれ独自の色があって良かった。最も師と似ていないように見える作品を制作した人が一番弟子の愛弟子であることを知る。面白い。近づけば近づくほど似なくなる。この世の真理に思える。

最後に面白かったこと。ギャラリーの人と話が弾み、作家さんの写真を見せてもらったら、思わず笑ってしまった。その「人となり」が「作品」とよく似ているのだ。作品は自分の生き写しなのだろう。自分を映し出せた時、それは作品になる。人間は皆違うからこそ、自分を出せるようになった弟子の作品は師匠とは似なくなる。

君たちはどう生きるか。どう生きるかは言えないけど、少なくとも自分を映してから死ぬってことだけはここで言っておく。

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