フジワラ・ケント

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「新しさは貴方らしさ」

出張にて広島。地の利がある後輩が夕食をアテンドしてくれた「お好み焼き八昌」。事前に高く設定されたハードルに内心期待せず暖簾を潜る。その浅はかな経験則はいとも簡単に覆された。 カウンター8席。薄暗く年季の入った店内。壁一面色紙。愛想を極限まで抑え、鉄板に向かう女将。頬張った瞬間、ほっぺが落ちる。女将に質問。「どれぐらい修行したんですか」、はにかんで「気がついたら焼けるようになってました」。 新しさは2種類ある。「漂白の新しさ」と「積み重ねの新しさ」。一般に使われる「新しさ」

    • 「和えて分不相応」

      定期的な勉強会。今回のテーマは組織デザイン。人は複雑であり、その集まりの組織はもっと複雑である。だからこそ、時空の流れに沿って最適解が変わる。それが面白味であり、組織デザイナーの醍醐味だ。 一人で出来ないから集まってやる。それが組織であり、その必然として「分業」がある。分業は世紀の発明であり、その威力は「神の見えざる手」というネーミングの通り。一方で組織化は最終的にはみんなで一つのモノをつくる営みであり、分けたモノを合わせる作業=「調整」が必要になる。調整の手段として、「標

      • 「モリタ―ジュ」

        スーラ―ジュと森田子龍展 by兵庫県立美術館。いつも通りNoプランで暖簾を潜ると、そこはワンダーランドだった。 僕はよく質問する。美術館ではよくわからないことがたくさん起こるのに質問する人がほとんどいないのがいつも不思議だ。それがマナーなのか。だとしたら、僕は行儀よく食べるより美味しく食べる方を選ぶ。母は「おいしい!」と言って手料理を食べる僕らをみて喜んだ。芸術家も同じではないだろうか。 鑑賞後、学芸員に質問。 「あの書はどうやって書いてるんですか」、「実はわからないんで

        • 「アレモネ」

          中之島美術館のモネ展。日本人はなぜかモネが好きだ。連日、盛況な動員を横目にタイミングを計って平日のアイドルタイムに侵入。足を運んだ甲斐があった。甲本ヒロトとクロードモネの共通点。それはアレを前進させることに没頭した人生である。 よくもまあ飽きずに描き続けたもんだ。積藁も睡蓮も。何回描けば気が済むんだろう、と思わずにはいられない程の連作。モノをつくる人はわかると思うのだが、制作してると飽きが来る。モチーフや手法やなんやかんや変えたくなる。でも突き抜ける奴は変えない。ヒロトもモ

        「新しさは貴方らしさ」

          「サービスって何」

          『ボランタリー経済の誕生』。知の巨人たちの共著。25年程の出版物だが、古く感じない。それは、その間、その社会が変わっていないことを意味している。その中の一文を紹介したい。 『サービスとは、もともと「あいだ」を感じ合うこと。』 膝を打った。日頃、様々なサービスを利用する中で、自分自身がビジネスに携わる中での怒り、苛立ちの理由がわかった。それは『なぜ「あいだ」を感じ合おうとしないんだ』ということに尽きるということだ。 全ての違和感がここに集約される。それは極めてミクロな肌感

          「サービスって何」

          「交差しない交差点」

          先日の事。正午過ぎ、御堂筋の本町交差点。事件発生。 僕は徒歩だった。商談終わり帰路の途中。交差点に差し掛かると信号が赤になり立ち止まる。反対の信号が赤になったので、動き出そうと構えるが信号は赤のまま動かない。どうもおかしい。昼時で人出もあり、群衆が騒めき始める。 警察官が一人カラーコーンを立てだした。片側3車線で分離帯もある大きな交差点に一人で作業。間に合っていない。僕はたまらず、車線に出て警察官に声をかけた。「すみません。渡っていいですか?」、「ダメです」、以上。その後

          「交差しない交差点」

          「オイラはオグラ―」

          日経の日曜版に寺山修二特集。レぺゼン昭和が並ぶスタッツの中で、小椋佳のコメントが目に留まった。 『会社員という「組織内存在」として歌を作る異色の道も、寺山周辺の芸術家らに接し「蓄積が違う。個性を出すにはこれしかない」と痛感して選んだ道。』 おこがましくも自分を重ねる。僕もよく同じように思う。専門家には敵わない。一つの道しかなければ。しかしどうだ。道は無限にある。気づけるかどうかなのだ。 小椋というイノベーターが生まれた昭和。それに続きアーリーアダプターが台頭した平成。そ

          「オイラはオグラ―」

          「LEADERはREADERたれ」

          新井紀子著『AIに負けない子どもを育てる』。前著『AI vs 教科書の読めない子どもたち』も数年前に拝読し、今回たまたま続編を手に取った。正直、衝撃で、劇的な、出来映yeah!である。子を持つ親は今すぐ読んだ方がいい。 なぜか。目下、愛情と時間と私財を投じている教育が逆効果になっている可能性があるからだ。良かれと思ってやることが、子どもがAIに負けるように仕向けている可能性が高い。子どもに罪はない。あるとすれば、大人が真理を理解しようとしなかった怠慢であり、理解していると思

          「LEADERはREADERたれ」

          「ロマンスグレー」

          ロマンチストでありたい。浪漫を追いかける人間。浪漫とは何か、という定義は置いておいて話を続ける。そんな野暮な事はしない。それも浪漫である。 和田秀樹と中野信子の対談『頭の良さとは何か』。その中での二人の意見がいい。 和田は言う。頭の良さとは、「認知的成熟度である。物事を白か黒かでなく、中にはグレーもある。グレーにもさらに薄い濃いがあると、程度で考えることができるようになること」、「仮説を立てる能力である。フェルマーの最終定理は350年以上たってワイルズによって証明されたが

          「ロマンスグレー」

          「天使の落とし物」

          酒粕。数年前にはまって以来、毎日甘酒を飲んでいる。酒粕、生姜、黒糖にくるみを入れて食べる。酒粕は京阪神にある酒蔵を巡り、色々試した結果、灘の酒蔵のものを使っている。 なぜ酒粕を持ち出したのか。それは「人的ネットワーク」についての「良い例え」だからだ。僕はずっと「人的ネットワーク」の概念自体には賛成というか非常に重要なモノだと思っているものの、「人的ネットワーク」を標榜するアクティビズムにはどうしても馴染めなかった。ずっと自分でもなぜか不思議に思っていた。その長年の不可解さが

          「天使の落とし物」

          「これが宇吉郎のやり方」

          中谷宇吉郎。世界で初めて雪の結晶の生成メカニズムを解き明かした男。石川県の「雪の科学館」に寄り道。いつも通り予備知識ゼロ。でもいつも通り施設の人とバイブスを共有。だから未知との遭遇はやめられねえ。好奇心は止まらねえ。 なぜ中谷は世界初となったのか。日本では雪が降るから。違う。世界の中で雪がもっと身近な国はいくらでもある。その謎は日本人の特徴「縮み志向」があったと僕は思う。物事を「縮める事」を志向する日本人だからこそ、結晶という精密で繊細な折り紙を解き明かしたのだ。 なぜ中

          「これが宇吉郎のやり方」

          「人間専用メモリースティック」

          最近、熊の出没が増えている。どうやら本当らしい。僕も思いがけず「クマ」に遭遇した。 旅券を再発行するため、戸籍謄本を取りに久方ぶりに伊丹市役所へ赴く。建て替わっていることに驚き、隈っぽいなと思いつつ、手続きを済ませる。思ったより早く終わったので建物を徘徊。三沢厚彦と棚田康司の超イケてる作品がガラスで囲うことなく、動線の中に配置されているセンスと心意気に酔う。ほろ酔いで案内センターの人と会話してみた。 「なんで三沢さんと棚田さんなんですか?」 「すみません、わかりません、で

          「人間専用メモリースティック」

          「クリープのクリップ」

          値上げがエグい。行く先々で「価格改定のご案内」に遭遇する。提示する側は申し訳なさそうだが、今までが「安すぎた」だけである。とはいえ、賃上げを除けば、気分があがるものではない。 そんな中で値下がり続けているものの一つが「音楽」だ。クルーガー著『ROCKONOMICS』で音楽界を覗いてみた。僕も音楽を1日2~3時間聴いているが、世界的にみんな大体同じぐらい音楽を聴いているらしい。それで僕が払う代金はAppleへの使用量1080円/月。消費時間で考えると、とんでもなくお買い得だ。

          「クリープのクリップ」

          「シブいエル―シブ」

          伊丹敬之の『創造的論文の書き方』。論文を書く人に限らず、鋭い思考する人=クリアシンカーにお勧めの本だ。その方法論を取り入れ、鍛錬すれば確実に思考の切れ味が増すだろう。 エル―シブ。捕まえにくい、するりと逃げる、という意。トランプのゲームで親が一枚ずつカードを出していく。子は出されるカードのパターンを見抜くというゲームだ。要するに論文を書くということは、エル―シブをすること、事象の中に潜む本質なりパターンの抽出であり、提示である。 論文の優劣は、提示する仮説の「意外さ」と「

          「シブいエル―シブ」

          「似ることは似ないこと」

          大阪国際芸術祭。「道を外した書」の展示に足を運んだ。思いもよらず面白かった事。 井上有一という書家、その弟子4名の作品が展示されている。僕は予備知識無しで一通り見て回り、二周目に作家の背景や解説を見ながら回った。まず面白かったのは、一周目で惹かれた作品の多くが井上師匠のモノであったこと。師は偉大なり。僕にはなぜかすらわからない。理由がわかるレベルにさえない程に一流との距離は遠い。しかし、確実に言えることは、良いモノは誰が見ても良いってこと。背景や想いを知ることは作品の良さを

          「似ることは似ないこと」

          「筋の力」

          筋の話。 経営者曰く。数字より用事だ。鉛筆をなめれば数字はつくれるが、事はハンズオンでなければつくれない。事に当たれ。 学者曰く。数字より筋だ。鉛筆をなめれば数字はつくれるが、どれほど硬い筆を持ってしても深層を貫く筋には届かない。筋を通せ。 この二つの言葉は、僕が尊敬する別々の人間から違う文脈の中で教えてもらった言葉である。僕の好みだ。数字を追うポジショニングサッカーはマザーXXカー。プレミアのインテンシティがわかりやすくて良い。世界一である理由。それはそのプレースタイ