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女性向け同人に見る国家観・人生観の変遷①(一強キャラジャンルとは何か?)

こんにちは。花璃です。
今日から二回くらいに分けて、ここ十年弱の女性向け同人流行(第二次安倍政権とちょうど被っているかもしれない)を分析してみようと思います。
最近の同人流行で特筆すべきものに、
①一強カプジャンル
②一強キャラジャンル

というのがあります。
一強キャラや一強カップリングに人が集中することでジャンル内の全体主義的な傾向が強くなってるなぁという感じがする。
(右へ倣えで解釈が似たり寄ったりになったり、あっちもこっちもオメガバースになったりとか。)

今日はそのうちの一つ、一強キャラジャンルについて書こうと思います。

一強キャラジャンルとは何か?

一強キャラジャンルとは、ジャンル内で一人だけ突出して人気のあるキャラクターがおり、そのキャラクターを中心に版権もののグッズや二次創作同人誌が流通しているジャンルです。
①進撃の巨人のリヴァイ兵長(2013年〜)
②名探偵コナンの安室透(2018年〜)
が代表だと思います。
ちょうど進撃もコナンも未見なのですが、二人とも脇役であるにもかかわらずキャラ単体での人気がものすごく、グッズの売り上げが突出していたり、スピンオフの主人公になったりしたらしい。
腐向けの中でも受け人気・攻め人気が拮抗し、男女カプやドリ層、特に進撃のリヴァイさんはライト層の男性にも人気があった(アニメ化前ですが、某男性タレントも好きだと言っていた)という感じがします。

安室透さんが公安警察の警察官だというのを知って、以前、モーリー・ロバートソンさんのニコニコ動画チャンネルで福島香織さん(中国専門のライターさん)が
「中国でも『進撃の巨人』が流行っていて、だけど、日本とは違って中国では『進撃』は右翼的な作品、現代日本の右傾化を象徴する作品だと解釈されている。進撃に出てくる壁は日本を取り巻く鎖国的環境、巨人は日本に侵入してくる外国人、特に中国人を表しているのではと中国のインターネット掲示板で囁かれている」(うろ覚えなので多分間違ってる)
と話しておられたのを思い出し、なるほどと思ったので今日はそれについて書きます。

安室透さんというのは最初は2016年に受けとしてカップリング人気が出た(お相手は米国籍の日系FBI捜査官)後、2018年に主演映画(?笑)が公開され、攻め人気・ドリ人気が出たところでノマ爆されて阿鼻叫喚だったらしい。安室さん攻めのカップリングは主人公受け(ってコナンくん?マジか!)他の腐カプの他男女カプ多数&ドリ。

一方のリヴァイ兵長は攻めとしては主人公(エレン・イェーガー)他多数、受けとしてもエレンや団長(エルヴィン・スミス)とかいう目上キャラともカップリング人気があるらしい。

エルリエレという主人公と団長に対してサンドイッチされる(エルリ+エレリで両方リヴァイが受ける)というのもあるらしい。

リヴァイ兵長、人気ですね♡


②ミリしら腐女子が一強人気を分析する

両作品をミリしらのわたしが直観的に思うのは、リヴァイ兵長も安室透さんも

日本という国家を崩壊から守るヒーロー

としての人気なのでは?ということです。
高齢腐女子(アラフォー以上?)には受け人気、若めの腐女子には攻め・ドリ人気なんじゃないかなと予想。
日本を守るヒーローである兵長の攻めの相手のエルヴィンがアメリカという国家を彷彿とさせるし、安室さんの場合はあからさまに日系アメリカ人なんですね。
アメリカという国家が文字通り一強で世界を牛耳っていた冷戦崩壊後の1990年代を知っている高齢腐女子は日本国家のアイコンであるリヴァイ=安室透をアメリカの庇護下に置こうとし、アメリカの世界覇権と無縁に育った(2001年の同時多発テロ以降の米国は中東の泥沼にどっぷりで、日本周辺でのアメリカの威信は下がりっぱなし、逆に中韓の台頭が著しい)若い世代は日本を守るヒーローに守ってもらいたい=攻めにしてドリる。んじゃないかと。
多少調べましたが両作品の中身についてはミリしらですし、これは個人的な意見に過ぎないんですけど、カップリング傾向に割と世代間の国家観が現れてると思うんですね。
ノマ・ドリの増加や受け人気と攻め人気の拮抗・世代間格差については世相・人生観の変化が現れていると思う。


③シン・ゴジラとの関連

妊娠中&海外住みでリアタイで見れなかったシン・ゴジラにも、その辺の国家観やヒーロー待望の機運を感じました。

この映画、トンデモだなぁと思ったのが、わたしの大好きな石原さとみちゃん(主人の母に似てるね♡言われたこと、一生忘れない♡)がアメリカ政府の秘書官みたいな日系人の女の子役で出てくるんですね〜

コナンに出てくるFBIが日系人なのと似た、庵野監督やコナンの漫画家さんなどのアメリカ最強時代を経験した上の世代に共通する

自分に都合のいい空想のアメリカ

に助けてもらいたいという思想を感じる。
一方で、腐人気だったのは官僚同士をカプらせた(?ミリしらごめん)

内閣腐

だったというのもなかなか興味深い。


④オタクは意外とリアリストかもしれない

オタクの右傾化や日の丸アイコンってよく言われるらしいんですが、(艦隊コレクションっていう戦時中の戦艦の美少女ゲームが男性向けの二次創作ではここ数年覇権ジャンルらしい)若い世代のオタクにとっては

アメリカは助けてくれない

という直観があり、結果として

英霊ヘルプミー=右傾化

になっているのではないかという説。
同じように他力本願ではあるけれど、ある意味現実を見ているとも言えると思う。
男性向けの前覇権ジャンルが中華っぽい題材の『東方Project』だったというのも興味深いです。尖閣諸島問題と東方Projectの衰退の時期的関連とかも調べたら面白そう。


⑤日本人とは誰なのか?

海外住みで、わたしのうちの子たちもいわゆるハーフなので興味深く思っているのはリヴァイ兵長は名前こそアメリカ風(ジーンズのリーヴァイス思い出す)小柄で黒髪・中分け・三白眼の大昔なら飛影みたいな日本人ルックスなのに対して、安室さんは名前の割には長身・金髪・碧眼(肌の色も濃い?)の日本人離れしたルックスなことです。

リヴァイ兵長の攻めはエルヴィン・スミス、エレン・イェーガーという金髪、安室さんのお相手の攻めは黒髪の日系アメリカ人というのも、2013年から2018年の五年間に日本人観が変化して、

日本人とは出自・見た目によらず、日本への帰属意識を持つものである

という風に変わってきたのかもしれない。ハーフや外国育ちのアスリートも増えてるみたいですしね。

帰属意識という見えないものを物差しに敵味方を判別することに恐れも感じるけれど、日本という国と国民の国家観がこの十年で劇的に変わっていることは確かなんじゃないかと思う。

壁をぶち破って侵入してくる巨人と戦う兵長、国の中の敵と戦う安室さんという戦いの対象の対比も興味深いですね。

花璃。

海外住み主婦のゆるオタ生活について時々発信します。