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「7SEEDS」から学ぶ「多様性」 〜日本でサバイバルする方法〜

7月の頭、帯状疱疹が顔にでき、1週間仕事を休んでいた。その頃、ちょうどネットで3巻無料で読めたので暇つぶしに読み出したら、まんまとハマってしまった。外伝あわせて全36巻、大人買いした田村由美さんの漫画「7SEEDS」。7月中に3回も読み返したくらいハマっている。

※ネタバレ嫌いな人もいるかもですが、あらすじを説明しつつ、読むときの楽しみは損なわれないよう、ストーリーの肝心なことには触れないようにしているので、安心して読んでください。

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舞台は未来の日本。地球に隕石が落ち、氷河期がきて、そのままでは人類が滅亡してしまうという予測から、国家プロジェクトとして、人間を冷凍保存しておき、その後、人が住める環境になったら解凍されるよう、未来に若者を送り出す、その過去と未来が交錯する物語。

未来に送られたのは全部で5チーム。各チームには若者7人が選ばれ、そこに事情を知っている大人がガイドとして入れられていた。

最初に登場するのは、何も取り柄がない、現代社会では社会不適合とされていた人間が集められたチーム。寝て起きたら海で遭難、いきなり無人島でサバイバル生活が始まる。

そのほか、音楽や人など愛すべき対象を持っている人間が集められたチーム、芸能やスポーツで一流を志していた人間が集められたチーム、建築やITなど現代のテクノロジーあってこそ、そのスキルを発動することができる能力を持った人間がいるチームなど、様々だ。

そして…最初に未来に送られたチームは、未来に送るべく、優秀な遺伝子から生み出されていた。親はなく、外界に出ることなく、施設でまとめて育て鍛えられ、未来に送られるためだけに生き、生死をかけた最終選抜をくぐり抜けてきた、生き抜くためのスキルを持った精鋭たちだった。

物語が進むに連れ、各チームが少しずつ接触し、交錯し、様々な人間ドラマが生まれていく。

最初に出会った時は分かり合えず、別々の道を行くことになったり、あるチームとは衝突してうまく行かなかったメンバーが、別のチームに合流したらよい面が引き出され、頼りにされ、信頼関係を構築していけたり。

メンバーが次第にシャッフルされ、いろんな旅をしていくうちに新たなチームができたり、経験を重ね再会することで、また新たな関係性を築けたりする。

能力がある人、ない人。
目標がある人、ない人。
一人で行動したい人、チームで力を発揮する人。
行動力のある人、思慮深い人。
前に出る人、後ろからサポートする人。
よく喋る人、あまり喋らない人。
主張できる人、空気を読む人。
危機に強い人、日常に強い人。
そして、人生の楽しみ方を知っている人、知らない人。

みんな、日本人だ。
けれど、そこには確かに「多様性」がある。
一人として同じ人間はいない。

また、人には相性がある。
自分のいい面や力が引き出される相手がいる一方、自分の嫌な面、攻撃性ばかり引き出されてしまう相手もいる。

この人と生きていきたい、ここで生きていく、と腹をくくったときに、初めて人は相手と向き合うことができる。

能力ある人間たちを選んで未来に送り出した後、大人たちがその多様性のなさに不安になって追加した、いわゆる能力がないと見なされていたチームのメンバーが、結果的に、未来と言う新しい場所で、自分の居場所を見つけ、自分の役割を見つけ、またそれによって自分を変え、その姿が他人を動かし、物語自体をも動かしていった。

ほかのチーム、特に選抜チームが生き抜くことを「仕事」ととらえ、逃げられない運命ととらえていたのに対し、このチームが一番「遊ぶ」ことができ、「なんとかなるさ」とその日その日を生きていくことができる強さを持っていた。

物語の終盤、期せずして全チームがある場所で合流し、最終的に同じ目的のために力を合わせ、助け合う。共に困難を乗り越えることで、新たに絆が生まれていく。

それでも、一度失われた信頼関係は簡単には回復しない。どうやっても、共に生きられない相手もいる。でもそれなら、また新しい世界に居場所を探しにいけばいい。

***

生きるために、水と食べ物をどう確保するか、他の生物から身を守るためにどうするか、そういう心配がなく、全てお膳立てされ、安全で快適に生きられる今の日本のような社会は、ある意味幸せかもしれない。

しかし、「なんだか生きづらい」と感じる今の日本という社会で生きることも、ある意味サバイバルだと思える現状で、彼らから学ぶとしたら、やはりいろんな人がいるから、困難を乗り越える知恵を掛け合わせることができる、という、多様性が生む化学変化が、結局は生きやすい世の中を生み出すのではないか、ということだ。

ひとりひとり違うからこそ、その組み合わせは無限にあり、そこから新しい何かが生まれる可能性も無限にあるということだ。

自分では理解しがたい相手に対して、違う、おかしい、といくら目くじら立てていても、何も変わらない。自分の神経がすり減るだけだ。

それならば、あの人はああいう人、と距離を置き、自分が力を引き出される相手と関わる時間を増やすに限る。イライラに時間を使うのが、一番もったいない。

日本という安全で便利な国で、サバイバルしていきたいなら、誰と生きるか選ぶことが重要だ。けれど決して、日本に生まれたからといって、日本でサバイバルしなきゃいけないわけじゃない。人が生きられる環境は世界中にある。いつでも、逃げられる。逃げるという選択肢があることも、知っていた方が生きやすい。

と、いろいろ書いたが、とにかく面白いので、読んでほしい。おとなの夏休み自由研究に最適ですよ(笑)

ちなみに、わたしの夏休み自由研究(笑)はこちら↓

多様性推し?(笑)な理由はこちら↓

むしろ今、私は「日本の多様性」を自由研究しているのかもしれない。

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