誤爆召還

 マントをまとった男がビルの上から「わははははは」と笑った。拡声器を通したかのように夜の静寂に響き渡る。
「われらは創造的悪魔集団ゾーポ」
「だっせー」
「時代遅れー」
 地上に集まった民衆が野次る。
「うるさい。黙れ。ぶっ殺す」
「やってみろー」
「おれたちにはウルトラ137兄弟がついているぞ」
「いつの間にそんなに増えた」
「正義は予算さえあればいくらでも増殖するぞ」
「くそお。世にも恐ろしい怪獣を召還してやる。大怪獣ピンドラ、召還!」
「にゃー」
 どう見ても地味な野良猫にしか見えない。大きさを別にすれば。
「なんだ、あれは」
 ゾーポの代表はバックヤードに向かって小声で聞く。
「はっ。位置指定に問題があったようで。杉並区で飼われている家ネコです。名前はまうこだそうです」
「名前なんかどうでもいい!」
 巨大化したまうこは、あたりを見回してびくっとした。たくさんの小人がいる。まうこ、人は怖いのー。
 錯乱したまうこはあたりを駆け回った。
 なにもかもが小さく、隠れる場所がない。堅いうんこをぽんぽん排出したら、東京タワーが根元から折れた。
「地球防衛軍、出撃」
 防衛軍、壊滅。
 ウルトラ兄弟、登場。
 巨大まうこは六本木ヒルズに滝のようなおしこをひっかけた。ウルトラ兄弟が右往左往して巨大雑巾でおしっこ洪水を片付けている隙にまうこは素早く築地に移動し、魚のにおいをくんくん嗅いだ。
「こんなみじんこみたいなおさかなはいやなのー」
 まうこは勝手に等身大に戻って、売れ残りの魚をかっぱらうと素早く逃げた。
「わーはははは」
「笑って誤魔化すなー」
「撤退じゃー」
「逃げるのかー」
「今日はこのくらいにしといたるわ」
 ゾーポは捨て台詞を残して夜空に消えた。

(了)

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