オフィスデポ伝説

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 オフィスデポは通販カタログだ。オフィスにあるものなら紙コップからエプロン、靴べら、空調機、絆創膏までなんでも載っている。商品は増えることはあっても減ることはなく、そのため、カタログの厚さも増すばかり。

 ある日、たくさんのオフィスが入っている雑居ビルの床が抜けた。オフィスデポのカタログが一斉に配達されてきたせいだと言われている。

 宅配便の会社がオフィスデポの配達を断ってきた。理由は、ひとりで運ぶと腰を壊すから。困ったデポ側は四人乗りの特別仕様車を作ったという。

 オフィスデポのカタログは印刷会社からもダメ出しをくらった。ページが増えすぎて製本できないという。じゃあ、ページはこれ以上増やしませんということで、判型を大きくすることになった。

 カタログがマンションの扉よりも大きくなってしまい、SOHOに届けることができなくなってしまった。
 異説もある。不在だったので、配達業者がカタログを扉に立てかけて帰った。カタログのせいで事務所に入れない従業員が続出したので、経営者が激怒して配達を止めさせた。
 都市伝説では、カタログが倒れてOLを押しつぶしたせいだということになっている。これはウソだ。全身八カ所を骨折しただけである。

 配達が難しくなったので、埋め込み型のオフィスデポカタログが出回り始めた。都内のオフィス物件の壁に最初から埋め込んである。開こうとすると、オフィス内の机や椅子をすべてどかさないといけないので、実際に利用されることはないが、防音性に優れているので、物件そのものは好評だ。

 アラブの金持ちが、タンカーをチャーターしてオフィスデポジャパンのカタログを輸入。「これ全部」と注文を出した。資金繰りが間に合わず、オフィスデポ・ジャパンは倒産した。これにより日本のパルプ消費量は約3割減ったという。

(了)

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