家族

「おれ、実はヤモリなんだけど」
 夫が告白した。
「知っていたわよ」
「えっ、最初から?」
「だって、あなたいつも壁に張り付いていたじゃない」
「それがどうかしたか」
「人間はそういうことはしないのよ」
「そういうおまえも天井に張り付いていたじゃないか」
「それは忍者だからよ」
 夫婦の会話を聞いていた息子が口出しした。
「じゃあ、おれはなんなの?」
 部屋の中をバタバタ飛び回る息子を眺めて、夫婦はさあなんだろうねえと首を傾げる。

(了)

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