妻の役割

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 ぴんぽーん。
 またなにか来た。いやいやながら扉を開けると、目の覚めるような美人がいた。
「私はあなたの妻です」
 私は茫然として、階段にちょこんと座っているびすを見た。
 びすは首を横に振る。
「あの、私にはもう妻がいますのでお引き取りください」
「中古ですから破棄しましょう」
 と美女は平然と言う。
「破棄って」
「そのひと、ロボットでチュー」
「あ」
「ロボットだからなんだというんですか」
 美人ロボットは憤然とした。
「わたしにはきちんと妻としての機能が実装されているのです。あなたの人間妻には負けません」
「たとえば?」
「たとえば、あなたの服のポケットをさぐって、怪しい名刺がないかどうかをチェックします」
「しなくていい」
「会社のあなたに電話して今夜のおかずの買い物してきてもらいます」
「自分でしろよ」
「夫婦は共同作業です」
「じゃあ仕事もしてよ」
「あなた、分担という言葉を知りませんか」
 むかっとした。
「というふうに、いじわるもできます」
 びすが感心してる。
「完璧な妻でチュー」
「完璧すぎて不愉快です。お引き取りください」

(了)

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