朝の指令

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 親方の朝は早い。
 親方は、正確に言えば、自動組み立てロボット「親方くん」だ。一見、床を掃除してまわるお掃除ロボットにしか見えない。
 朝早くから私とびすに命令を下す。
「さあ、今日はなにを作るんでえ」
「作るんでえ、っていうけど、あんた、指示するだけでなにもしないじゃないか」
「手もない足もない。どうやって作れというんじゃ。いうなら設計者に文句を言え」
「ちくしょう」
 びすが申し訳なさそうにしょげている。元はと言えば、びすが通販でこのロボットを買ってプレゼントしてくれたのだ。
「おまえ、身長と股下の長さを言え」
「身長は160センチ、股下なんて知らないよ」
 びすが正確な数字を言ったので驚いた。
「なんで知ってる」
「みればわかるでチュー」
「短足だな」
「うるさい」
「今日は、椅子の下に置く踏み台を作ることにする。どうせだから電熱ヒーターを仕込んでやろう。これから冷える季節だからな」
 親方の決定は絶対だ。親方が、部品を指定する。
 買いに行くのも、作るのも私だ。
 ただ、微妙に欲しくなるものを言うのが、憎いところ。そういえば、もう何年も踏み台がほしいなあと思っていたのだった。

(了)

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