変身
空から落ちてくるものが雨や雪だけではなくなった。
黄砂も厭だが、猫の毛はそれどころではない。ふわふわして邪魔だし、ようやく落ちたから掃除しようとすると空中を舞ってしまってきりがない。
しかし、そんなのはまだいいほうだ。なんといっても怖いのは針である。空から一直線に落ちてきて、頭にずぶりと刺さる。死んでしまう者もいるし、おかしくなってしまう者もいる。
痛いと思ったがなにが起きたのかわからず、病院に駆け込むと手の甲に穴があいていたこともある。
そんなわけで、朝、なにか気がかりな夢から目覚めると、全身が黒々と光るカブトムシになっていたが、すぐに環境への適応だなと納得がいったので、ぜんぜん不条理感はないのだった。
(了)
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