くやしい
がーりがーり。
がーりがりがり。
がりがりがりっ。
何事であるかという顔をしてびすが近づいてきた。
「なにをしているでチュー」
「珈琲の豆をひいてる」
「この機械はなんでチュー」
「ミルだよ。知らないのか」
蓄音機みたいな機械に耳をあて、びすがじっとなにかを聞いている。
「なにしているんだ」
「しーっ。声を聞いているでチュー」
「誰の」
「珈琲豆の」
「なんか言ってるか?」
「干からびるでチュー。助けてほしいでチュー」
「それ、おまえが言ってるだけだろ」
こうみえて、けっこう負けず嫌いなところがあるのだ、この電子ネズミは。
「で、この機械の名前は?」
「キクでチュー」
やっぱり。
(了)
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