杉並インフル

「顔が真っ赤でチュー」
「やっぱり?」
 フラフラする。体温をはかると39度あった。
「たたた、大変でチュー」
「そっかあ」
 頭が働かないので、実感がない。
「発熱相談センターに電話するでチュー」
「してくれ」
「はい。センターです」
「発熱しました」
「何度ですか」
「39度です」
「からかわないでください」
 電話を切られた。
「39度じゃ足りないみたいだぞ」
「も、申し訳ないでチュー。いまのは地熱開発センターだったでチュー」
「間違えすぎだろ」
「はい。発熱相談センターです」
「発熱しました」
「何度ですか」
「39度です」
「どこか痛むところはありますか」
「喉、痛いです。頭がぼんやりします」
「呼吸は苦しくないですか」
「大丈夫です」
「顔に紅白の縞が出てますか」
「ちょっと待ってください。びす、どうなの?」
「赤いだけでチュー」
「赤いだけですね」
「ときどき、鼻から蒸気が噴き出しますか」
「噴き出しません」
「爪は何色ですか」
「ふつうの色です」
「緑っぽくないですか」
「ないです」
「杉並インフルエンザではないようです。自宅で療養してください」
 杉並インフルエンザ、恐るべし。

(了)

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