「なんで結婚しないんだよ」
 と、オレは同僚に言った。
 回りに独身男ばかりいると、なんだか自分だけが貧乏くじを引いた気分になる。
「こんな出会いのない職場で結婚できるほうがどうかしてる。おまえは外で見つけてきたから関係ないだろうけど」
「見つけたんじゃねえよ」
「じゃあどうしたんだ」
「スーパーに注文した」
 同僚はあきれ顔で、
「最近のスーパーってそんなこともしているのか」
 と言った。
「ゆりかごから灰までなんでも売ってるさ」
 オレはスマホを取り出し、ネットスーパーにアクセスした。
 右側のカテゴリーから、結婚→嫁を選択する。
「さあ、どうする?」
「なにが」
「条件だよ」
「女ならなんでもいいよ」
 と友人は答え、オレはニヤッと笑った。 
「ホントだな?」
「そのかわり、なるべく安いのにしてくれよ」
 さすがに後ろめたさを感じる。
「条件なしだとすげえのが来るぞ。うちに見に来るか?」

「すまん。暴れるとは思わなかった。頭、大丈夫か?」
「まだくらくらする。やっぱり、条件つけるわ」
「そのほうがいい。オレも安いほうがいいと思って失敗したんだ」
 ふたたびネットスーパーにアクセスし、嫁を条件検索した。
「顔、モデル級。身長、160センチ。体重、50キロ以下。四大卒。言語、日本語。前科なし。入れ墨なし。ヒモなし」
 検索。
「5000万円だってさ」
「ははは。バカヤロー」
「いくつか条件抜くか」
 結局、体重、60キロ以下。言語、日本語。前科なし。入れ墨なし。ヒモなしというところまで条件を落とした。
「さて、これでいくらまで下がるかだな」
「タッチしてくれ」
 オレは無言で画面を見せた。1000万円。
 同僚も無言。

(了)

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