キムラくん

 幼なじみのキムラくんと道でばったり出会った。
「フカガワくん?」
 キムラくん?
 お互い、あまりにも変わっているので、にわかには信じがたい。でも、目つきは子どもの頃と変わらないものだ。
 どこに行くんだい?
「銭湯に行こうと思ってさ」
 ひさしぶりなんだし、ウチに来いよ。
「よし、そうするか」
 キムラくんは丼に張ったお湯に身を浸し、
「はあーっ」
 と心地よさげな声をあげた。
 まさかキムラくん家が目玉のオヤジの家系だとは夢にも思わなかったよ。
「まあ、子どもの頃はふつうだったからな。オヤジの後を継いだらポンっと目玉が飛び出しちゃってさ。いやあ驚いた驚いた」
 へえー。
「それより君はどうなってるんだ。けっこう凶相だぞ。耳はとがってるし、目は赤いし、背中に羽までついてるし」
 ああ、これか。うちも因果な商売でさあ。悪魔の家系だったんだよ。まさか君とか君の息子に滅ぼされるなんてことはないよなあ。
「うちは妖怪専門だからな。西洋の悪魔は対象外だよ」
 よかった。また来てくれよ。友だちがいなくなって困ってたんだ。
「ああ、今度は鬼太郎も連れてくるさ。朝まで騒ごうぜ」

(了)

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