無害王ジェニフ・ダブリン
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ジェニフ・オーサス・ダブリンは1743年に生まれ、1777年に王位を継いだ。生まれつき虚弱で、気弱。唯一のことを除いて、その生涯においてなにもしなかった。
唯一のことというのは粛正である。
彼は、自分より強いもの、能力の高いものが怖かったので、家臣を次々と国外に追放した。
結果として、自分に勝るとも劣らぬ腺病質な人間だけが王国の中心に居座った。
四周の国から攻め込まれ、王国はあっという間に崩壊したが、ダブリンは復讐などこれっぽっちも考えなかった。
彼は地下牢で五十七歳の生涯を閉じた。
後世の人々は彼のことを「無害王」と呼んだが、ダブリンにとっては知ったことではない。寿命まで生きるだけで大変だったのである。
むろん、「無害王」と呼んだのは新しく領土を得た他国の人々であって、自国民に死ぬほど恨まれたことは付け加えるまでもない。
(了)
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