びすのおでかけ
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「今日はお出かけでチュー」
「どっか行くの?」
「区役所で慰労会を開いてくれるのでチュー」
「慰労会? てことは、またなんかやらかしたんだな」
「内緒でチュー」
びすはいそいそと玄関先に行き、二本足で立って、道の遠くのほうを眺めていた。
わたしもいっしょになって眺めていると、小さなバスが近づいてきた。
「ネズミバスでチュー」
まるで模型のようだ。でも、運転席には帽子をかぶった白ネズミが座り、ほんとに運転をしている。
「おい、踏みつぶされちゃうぞ」
「大丈夫でチュー」
びすはぷしゅーと音をたてて開いた扉から、バスへ乗りこんでいった。
道路をよく見ると、歩道のそばのほんの十センチほどの位置に白線が引かれている。ネズミ専用路らしい。車を運転しないわたしはいままでまったく気づいていなかった。
だんだん電子ネズミの地位が向上している杉並区。
このまま住んでて大丈夫かなあと思いながら、わたしはなかなか遠ざかっていかない小さなバスを見送った。
(了)
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