健康診断課

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「杉並区の健康診断のお知らせです」
 役所からメールが届いた。
 フリーランスにとって区の健康診断はとてもありがたい。さっそく受診することにした。
「すぐに行く。どうすればいい?」
「4月20日、区の健康診断課までおいでください」
 地下鉄に乗って区役所に出かけた。巨大なビルの中を彷徨し、ようやく健康診断課にたどり着く。
「さあ必要なものはなんだ。健康保険かパスポートか納税証明か印鑑証明か。なんでもあるぞ」
「質問にお答えください」
 と窓口のコンピュータは言った。
「問い1、いまのお気持ちは? 1.ILove杉並区 2.それ以外」
「んー、その問いはほんとに必要?」
「はい」
「じゃ1でいいや」
「ありがとうございます」
「問い2、あなたの望む施策は? 1.杉並区に愛称をつける」
「選択肢がないよ」
「いまのところ、それしか施策の候補がございません」
「じゃ、聞くな」
「問い3、ネズミが好き」
「問いになってない」
「問い4、いまの杉並区に満足している? 1.している 2.わからない」
「否定はないのか」
「その答えを受けとめる自信はございません」
「問い5、結論は?」
「なんの?」
「杉並区は健康でしょうか?」
「私の健康診断じゃないのか!」
「最初から杉並区の健康診断と申し上げております」
「じゃ、いうぞ。病気だ。病名、自己愛性人格障害。ネズミに執着しすぎる。仕事を休んで療養すべし。以上」
「口が悪いですね。では、これからあなたの洗脳にとりかかります」
「黙るから家に帰してくれ」

(了)

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