工場再生

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 夜中。
 潰れたはずの工場からかすかな灯りが漏れる。戦時下の灯火管制のように。
 機械の低いうなりが聞こえ始める。
 おそるおそる近づいていく債権者。
「ちくしょー。誰だ、ふざけたことをしやがって」
 バン、とライトを点けると、そこには無数のネズミがいた。
 主人を亡くした電子ねずみの群れだった。
「うわあああ」
 あまりの恐ろしさに債権者は腰を抜かしたが、生産物が整然と並べられている光景をみて、現金なことに、「おっ」と思った。
 これはいけるのではないか。
 こうして、世間からまたひとつ人の領域が減った。
 政治も、メディアも知らないうちに、杉並区の作り出すねずみの世界がひそかに領土を広げていく。

(了)

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