友だち

 ふと夜中にトイレに起きた。
 眠りが浅くて困る。
 俺はさっそくスマホを取り出して、facebookの新着をチェックしようとした。
 圏外ってなんだ。いつもバリバリに電波が三本も立ってるじゃないか。夜中に電気を消したままできることってこれしかないんだよ。
「おまえねえ、すねてんじゃないよ」
 俺は暗闇の中でスマホに向かって文句を言った。
 夜中の圏外って、孤独を百倍深める気がする。
「機械はすねませんよ」
 と枕元から声がした。
 電子マウスだ。たくさんいるので区別はつかないが、いつの間にか、そのうちの一匹と友だちになってしまったのだ。
「おまえだって機械だろ。おれが相手してやんなきゃすねるじゃないか」
「すねてませんて」
「じゃあ、なんでいま突然圏外なんだよ」
「だからそれはあなたがあまりにも音声通話につかってあげないから、スマホの中の音声魂がやる気をなくしちゃったんですよ」
「それがすねるってことじゃないのか」
「あ」

(了)

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