消費税

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「税務署の方から参りました」
「方っからってなんだ。あなた誰」
「税務のプロフェッショナルとでも申しましょうか」
「うちは節税するほど儲かってないよ。だいたい会社ですらないし」
「いいんです。うちが扱っているのは消費税ですから」
「消費税?」
「そうです。だれもがほんとには上げないだろうと思っていたあの消費税です。いま消費税がいくらかご存じですよね」
「8パーセントでしょ」
「そうです。それが10パーセントになるとか15パーセントになるとかいろいろ言われております。ちなみに、フランスは19.6パーセント、スウェーデンでは25パーセントに達しています」
「よく暴動が起きないね」
「あちらはその分、きちんと社会保障をしていますから。日本じゃ期待できませんが。そこでここだけの話ですが、いま安価なうちに消費税を買いませんか?」
「ええー」
「たとえば、我が社から100万円で8パーセントの消費税を買っていただきますと、仮に10%になったとしても、先納分を使い切るまで消費税は8パーセントのままでOKです」
「ほんとにそんなシステムができるの」
「この際、難しい計算式は省きますが、可能です。なんせ我が社では、NASAから流出したノーベル賞クラスの頭脳が計算しておりますので」
「いやな単語がいっぱい出てきたな」
「気にしないでください」
「でも、消費税が上がると、計算するのは最初のうちだけで、すぐに消費税込みの定価にするでしょ。そういう時は、値引いてくれるわけ?」
「ちぇっ、気づかれたか」

(了)

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