神様の卵
千年に一度、神様は卵を産む。
卵のなかには自分が入っているのだと言われる。
自分の創作物を見続けるのがいやになって、赤ん坊に戻ってしまうのだ。
赤子同然とはいえ、神様は神様。
渋谷の109前に佇んでいると、あらゆる思考の断片が彼の頭上に降りかかってくる。
オヤジ、ムカつく。
ハゲあがりやがって。
金ないよ。
逃げんなババァ。
母ちゃんイタイ痛い。
くそー3%も急落かよ。今年に入って何度目だよー。
ボケちまいやがって。
頭わりぃーよな。
わかんねまったくわかんね。
IQ84だっけ?
血が止まんね。
泊まるとこね。
細かいことをごちゃごちゃごちゃごちゃ。
刺す。今日こそ刺す。
近づき、遠ざかり、大きな本音もあれば、呟くような本音もあれば、破裂しそうな本音もあって。
まだ柔らかい神様の心はズタズタに引き裂かれそうだ。
なんと素敵な世の中を作ってしまったことだろう。
もういちど作り直すことができればなあ。
夢見る神様の背中を蹴倒し、踏みつけにして、女子高生モデルや株屋や呼び込みや先生やスケコマシたちが通り過ぎていった。
(了)
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