見出し画像

ライターは、文字単価(1文字いくら)で請け負ってはいけない

「1文字◯円」
Webライターの世界では、こうした料金形態が採用されています。初心者ならともかく、中級者以上のライターならこの料金形態に違和感を覚えるはず。ライティングは、書くことではなく削ることによって完成度が高まるからです。

ライターは、「ここはもっと短くできる」「意味が重複している」「この話題はバッサリ消そう」などの削ることによって、文を短く、スリムに、リズムよくしていきます。私自身、書いているよりも削っている時間のほうが長いくらいです。

ライターとしての腕も、削ることによって磨かれます。自分の拙い文に気づき、削り、反省をし、次に活かします。ただ書いているだけでは、いつになっても腕は上がりません。

「人間は考える葦である」の言葉を残したパスカルが、友人に宛てた手紙の末尾に、こんな一文があります。

「今日は時間がなかった為に、このように長い手紙になってしまったことをお許しください」

パスカルが言い表しているように、短文と長文なら、短文のほうが難しく、時間もかかるのです。

文字単価は、駄文製造料金

削ることによって、文も腕も磨かれると伝えました。
そこから考えて、文字単価(1文字いくら)は何を意味するでしょうか。

駄文の量産と成長機会の損失です。

駄文の量産

文字単価(1文字いくら)は、文字をたくさん書けば書くほどお金がもらえる料金形態です。文字を増やすほうにインセンティブを与えているわけですから、わざわざ時間をかけてまで文を削ろうとはしなくなるでしょう。よって、駄文が量産(納品)されるわけです。

成長機会の損失

ライターも削る機会を失います。これは腕を磨く機会を失うのと同義です。ライターとしての腕も頭打ちになり、収入にも影響を与えるでしょう。

文字単価は、誰も幸せにしない

文字単価(1文字いくら)の料金形態は、発注する側も受ける側も幸せにはなりません。

理想は「1記事◯万円」と、文字数を提示しない依頼です。それが無理なら、「◯字~◯字」と文字数に十分な幅を設けます。このほうがライターも文字数にとらわれず記事が書けます。文量ではなく質を優先している旨もしっかりと伝えることが大切です。

そして、十分な報酬も用意してください。
もし報酬が安ければ、ライターはスピードを優先してしまい、削る作業を省いてしまいます。高い報酬を支払えば、「料金に見合う記事を書こう」「このクライアントに気に入られよう」と考えるため、削る時間をしっかりと設けて、質の高い記事を納品しようと考えます。

(例)
暗記に役立つノート術について書いてください。
文字数は3,000字~7,000字。報酬33,000円。
記事の質が高ければ、次もお願いしたいと思います。

注)ライターさんへ
初回を安く書かせて、「質が良ければ、次は高い報酬を支払います」と言ってくるクライアントを信じてはいけません。多くの場合、次はないか、次も安いです。まともなクライアントは、初回の仕事を餌に、相手を安く使おうとはしません。

なぜ文字単価が根付いたのか

私がこの記事を書いても、文字単価(1文字いくら)の料金形態は業界からなくならないでしょう。深く根付いてしまっているからです。ではなぜ、文字単価が根付いてしまったのか。

私が思うに、理由は2つ。一つは発注側が管理しやすいこと。もう一つは、長文記事がSEO上有利だから。

発注側が管理しやすい

記事単位だと、10,000字を書いてくる人もいれば、1,000字を書いてくる人もいます。発注側も、同じ料金を払っても良いのかと疑問が浮かぶでしょう。それに、記事の質は客観的に評価することが難しいです。結局、管理する側としては、目に見えて計れる文字数と報酬の紐づけが一番ラクなのです。

長文記事がSEO上有利

SEO業界には、「長文SEO」という施策があります。
長文記事をWebサイトに載せて、上位表示を狙うものをそう言います。

必ずしも、長い記事を書いたら上位表示されるわけではありません。ですが、強い相関が見られるのは確かです。「文字数の多い記事がほしい」となり、文字数の指定がある仕事が生まれます。また、企業の予算は決まっているため、「決まった予算内で、文字数がより多い記事を」となり、文字単価は安くなっていきます。1文字0.1円なんていう案件が生まれるのもそのためです。

もし、1,000字の記事が10,000字の記事を抑えて上位表示できるのなら、文字単価による発注は廃れていくかもしれません。ですが、今のところその兆しはありません。

文字単価に縛られない世界へ

優秀なライターを得たいなら、文字単価を辞めて、記事単価にする。
優秀なライターになりたいなら、文字単価の仕事のない世界に行く。

発注側は簡単なことです。記事単価で依頼すると決め、高い報酬を用意するだけです。そうでなければ、良いライターは手に入りませんし、育ちません。二流ライターを安く使っているほうが長期的に見て損をします。安物買いの銭失いをしているだけですから。

受注側(ライター)は、Web記事を単発で書いているうちは、文字単価の呪縛から逃れられません。クライアントの専属ライターになり固定給をいただくか、成果報酬型にするか。ほかには、紙媒体に移行する、Kindle本を出す、といった方向もあります。私のようにセールスコピーライターになるのも手です。セールスライティングは、文字単価といった慣習はありません。1本いくらの世界です。

まとめ

文字単価は、悪しき料金形態ですが、なくなることはないでしょう。
慧眼のある発注者は、記事単位を高報酬で発注し、ライターはWeb記事ではなく別のフィールドに移行するのが賢明でしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?