メディアはわかりにくい指標を使わないでください

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・メディアはわかりにくい指標を使わないでください
・エブリデイロープライス戦略が次のトレンド
・アパレル業界再編のメインプレイヤー
・MERYは過去の栄華を取り戻せるのか?
・いつまでたっても商品開発力が向上しないGMS


メディアはわかりにくい指標を使わないでください

ユークス ネッタポルテの2017年通期決算 売上高2800億円で「ゾゾ」に拮抗

ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)は2017年12月通期決算速報を発表した。売上高は前期比11.7%増の20億9000万ユーロ(約2821億円)で、ついに20億ユーロを突破した。確定した通期決算は3月6日に発表される。
(中略)
日本のファッションECモール最大手「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するスタートトゥデイは、流通総額が2700億円、売上高が1000億円(いずれも18年3月期)を見込んでおり、ECサイトの規模はほぼ同程度になる。

言わずと知れたラグジュアリーEC最大手ユークスネッタポルテ。リシュモングループの傘下であり、数少ないラグジュアリーECの成功事例と言えます。1年ちょっと前にYOOXと合併し、現在はユークスネッタポルテという社名で運営されております。(下記記事参照)

ユークスとネッタポルテが正式に合併 ミラノ証券所に上場

そんなネッタポルテが業績好調で20億ユーロ突破!は全然いいのですが、タイトルに非常に違和感が…。

◯「ゾゾ」はわかりやすい指標ではない
最近何かと比較対象に出てくる「ゾゾ」というワード。ECという点で確かに共通点はありますが、取り扱いブランドのカテゴリー、展開している地域など、比較しても全く無意味ではないでしょうか。そして何より規模感の比較の指標がとってもおかしい。ネッタポルテの年間売上金額(20億9000万ユーロ(約2821億円))とZOZOTOWNの流通総額(流通総額が2700億円、売上高が1000億円)を比較して同規模だと説明しているのです。ECの売上は、

売上=取り扱い高×テイクレート
※テイクレート…取り扱い高における売上のパーセンテージ。

下記のような数式で表されます。ここで言う取り扱い高は流通総額です。何故かWWDではこの売上(ネッタポルテ)と取り扱い高(ZOZOTOWN)を比較して同規模だと言っているのです。ネッタポルテのテイクレートが何%かわかりませんが、どう考えても流通総額はZOZOTOWNよりはるかに大きいでしょう。この図式を無視して「ZOZOに拮抗」というタイトルをつける事がいかにおかしいかがわかります。百歩譲って「ZOZOが拮抗」ならまだわからなくもないですが。

◯指標が稚拙
誰もがわかる企業を引き合いに出して、わかりやすく説明しようという気持ちはわからなくもないのですが、その指標が的外れでは余計に記事が頭に入りません。「第二のユニクロ」だとか「〜界のアップル」だとか、どれもいまいちピンときません。最近では紙媒体のWWDにてナチュラルカートというサイトが

「オーガニック業界のゾゾタウンを目指す」

と紹介されておりました。もはやECモール以外に共通点無いんですが…。当事者が言ってなかったとしたら迷惑なタイトルでしか無いですね。ZOZOTOWNの認知度が高い事や業績好調なのは誰も否定しませんが、だからと言って比較対象として万能ではありません。ライターによってクオリティは変わってくるのでしょうけど、メディア側はタイトルくらいはもうちょっと推敲した方がいいのでは…と思った次第です。


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