BEAMSの海外展開に見られる新しい付加価値の創造

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・BEAMSの海外展開に見られる新しい付加価値の創造
・UAがBEAMSみたいになってきた!
・企業の社会的責任は誰の為?
・今のままで百貨店が経営回復する事はない
・定価販売を強化する3つの要素


BEAMSの海外展開に見られる新しい付加価値の創造

ビームスが台湾に現地法人、店舗及びECを直接運営

ビームスは台湾に現地法人を設立した。これまで現地パートナーの富錦樹が店舗を運営してきたが、4月から自社の直接運営に乗り出す。現地向けの自社サイトを開設し、ネット販売もスタートする。会員システムも同時にスタートし、顧客情報を元に現地市場に合った品揃えを強化し、リアル店舗での販売とECの連動性も高める考えだ。

BEAMSが台湾に現地法人を設立しECを強化、リアル店舗との連動という事で、海外でもオムニチャネルを推進していくようです。

◯BEAMSの海外戦略

http://www.beams.co.jp/company/about/

上記リンクからわかるように、BEAMSの海外展開は今回報じられている台湾とロンドン。

ビームスがロンドンに現地法人設立、アーティストマネジメントや国内外企業の支援など

ロンドンで現地法人を設立する理由は下記4項目。

①国内外のアーティストのマネジメント
②日本ブランドの海外展開のサポートおよび日本マーケットへの海外ブランドのサポート
③日本企業および日本コンテンツの海外進出サポート
④各種撮影のコーディネートや広告のプロダクション

日本の商社のように国内外のハブ的存在になり、ファッションを含めたカルチャーを仲介し発信していくのが目的でしょう。ビームスらしい戦略です。こちらの記事に掲載がありますが、ロンドンを拠点とする世界最大のラグジュアリーEC「ユークスネッタタポルテ」のメンズEC「ミスターポーター」にて、以前ビームスがセレクトした6ブランドが販売され、その流れでロンドンコレクションに参加した事もありますので、活動は既に一部では実行されていました。

◯現地法人を設立する理由

これまでは富錦樹が現地店舗を運営し、ビームスは日本から商品を卸売りする形だった。だが、販売代行では品揃えがオリジナル商品に偏り、情報発信や販売員教育も十分にできない側面があった。このため昨年9月に資本金300万台湾ドルで現地法人を設立した。

では何故、現地法人まで設立しなければならないか。台湾ではこれまでパートナー企業が運営していましたし、BEAMSは香港ではI.Tという企業に店舗運営を委託しています。しかしそれでは解決できない問題が上記抜粋部分にも記されています。一つは「商品がオリジナルに偏る」事。そして二つ目が「情報発信や販売員教育が不十分」という事。海外(特にグレーターチャイナ)の店舗を見に行って特に思うのは、販売員のサービスレベルが日本国内と比較して圧倒的に低いという事です。販売同士の私語(ひどい時はお客の前でポケットに手を突っ込んんでいたり)やお客の見えるところでスマートフォンをいじっているなんて事は当たり前。ブランドが提供するサービスが全ての店舗において担保されなければ、強いブランド力は構築できません。過去、ラグジュアリーでも海外展開する際はFCを利用していた事もありますが、最終的には現地法人を作ってサービスを徹底するよう方向転換しています。結局は「企画・製造・販売」を垂直統合しないとうまくいかない事は歴史が証明してしまっているのです。

これは余談ですが、とあるブランドが欧米諸国に現地法人が無いまま卸をした際に、お金を一向に払ってもらえず、現地法人を設立した途端にお金が支払われたという事例もあるようです。現地法人する事は様々な面でメリットがあるようですね。

◯セレクトショップの新たな付加価値を創造
日本国内のセレクトショップは「差別化要素」と「利益率確保」の為、オリジナルの商品を拡充しSPA化しています。買い付け商品は他店でも仕入れる事ができますし、今や海外のECサイトを見れば買えない商品はどんどん減ってきています。そして買い付け商品の掛け率は大体が50〜60%なので、原価率が高く利益が確保しづらい。セレクトショップとしての付加価値を考えた時に、もはや淘汰されていく存在かと思っていましたが、BEAMSの海外戦略は新しい付加価値を創造しているように思います。国内外のハブとなり、ファッションを含むカルチャーのキュレーターとなる。その土地に根ざした商品開発とE販路を構築する。まさにBEAMSが掲げる「モノを通して文化を作る」をグローバルに体現しようとしています。SPA化、チェーン展開以外に、BEAMSの戦略はこれからのセレクトの生き抜き方のお手本となるのではないでしょうか。

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