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データでなく知識が知価を生む

今はまさに脱工業化社会そして知価社会

先般亡くなられた堺屋太一さんが、1985年に「工業化社会が終わり、知価社会が始まる」と ポスト工業化社会の仕組みと実像を探り、21世紀のビジョンを提唱されましたが、今はその真っ只中です。当時は工業化社会の次の情報化社会でしたがその先を見事に見抜かれたビジョンでした。日本人の多くのリーダーは共感しましたがそれだけで何の行動もなく終わりました。
情報化社会の覇者はIBM 、マイクロソフト、インテルでした。そして今世界経済の覇者はGAFAです。彼らはいきなり知価社会から始めました。 マイクロソフトは創業者が引退し、知価社会に移行することに成功しGAFAと肩を並べました。
日本は情報化社会に移行することもなく工業化社会のまま知価社会に突入してしまいました。経団連の会長・副会長の出身母体を見ればそれがよくわかります。そして日本経済は世界経済の中で存在感を消失しました。政府が躍起となっているGDPも知価社会の経済を反映するものではないでしょう。データ、情報、知識が財である資本主義の経済が成長していませんから日本は成長出来ないのです。

データ、情報、知識
この議論は深入りすると際限ありませんので、以下の議論の前提として、次のように定義しておきます。データとは現実世界の事象を表現するもの、情報とはデータに価値観を付加したもの、知識とは構造化された知価を有するもの。
今話題のIoTの出力はまさにデータです。このあと分析されて情報となります。特定の顧客価値の形に編集されたとき知識に変換される、としておきます。

情報を知識に変える作業
私達は情報の洪水の中に生きています。ただ、その溢れるばかりの情報から自分にとって有効な情報を獲得するには、頭の中に情報収納の枠組を用意する必要があります。まず、自分自身の興味と必要な情報を強く認識していることが重要です。そうすると脳の中にテーマを付けたファイルフォルダーが用意されます。するとテレビ、新聞、雑誌、書籍、会話、会議そしてウェブ中の価値ある関連情報に対する感度が高まります。独自の関心で設定したフォルダーを脳の中に持つことで、情報洪水の中から有用な情報を効率的に収集できます。出会った情報は速やかにリアルのフォルダーに収納します。今はソフトウェアが利用できます。
ただそのまま放っておいても知識になることはありません。いつしか消えてくるだけです。頭の中のフォルダーは情報をせき止めているだけです。ですからある程度溜まったら中を分析整理して構造化する作業が必要です。この作業で情報が知識に変換され、脳の中に応用可能な状態で長期保存されます。あくまで私の認識ですが。

情報の収集、分析、編集で知価を創る
結論からいうとデジタル技術を使って効率的な情報の収集、分析、編集をする必要があります。一方では目、耳、手、場合によっては嗅覚を使って生の情報を獲得することを怠ってはならないということです。
情報を価値ある知識や、アイデアに変換することが情報の編集です。価値ある情報を創り出そうという意思を持って作業する知的作業です。原稿を書く、プレゼンテーションを作る、企画書を作る、の時です。
その時、ある触媒的な刺激やプロセスにより脳の中で情報の組合せと連合がさかんに行われ、新しい意味付けがされ構造化された時、それは閃きとなり、アイデアとなります。この 現象とそのプロセスの能動的な始動を、私は「情報融合」と名付けました。これを積極的に意識するとアイデアが出やすくなります。
情報融合の手法の一つは、関連する情報を濃縮することです。この情報融合のテクニックはすでに意識しないで使われています。例えば創造的な仕事をする人は大きな机を使っています。資料の一覧性が重要ですから。プロジェクトルームを設営して資料などは壁に張る、情報を1枚にまとめる、などもしますね。情報の一覧性です。パソコンのディスプレイも、大きなディスプレイや複数のディスプレイが知的作業には有効です。

人工知能で作る知識
企業には価値ある知識が無形資産として膨大に蓄積されています。しかし金鉱石のように、精錬しなければ知価として取り出すことはできません。そして顧客価値として提供することはできません。大流行の機械学習を使えば、これが可能になります。
機械学習を使って、価値ある知識を抽出するには質の良いデータが大量に必要です。意図なく収集されたビックデータはゴミだらけでこのゴミを取り除く作業をデータクレンジングと言います。GoogleやApple、Facebook 、Amazonのビックデータはディジタルマーケティングを前提として収集されたデータです。
機械学習を単なる最小二乗法だという人もいますが、特定の目的に絞りそれでデータを収集すれば機械学習はビジネスの世界では情報から知識を創る強力な手段です。

未来の知識が一番重要
知識にも時制はあります。過去形の知識、現在形の知識そして未来形の知識です。いずれも重要ですが、今の時代は近未来の知識、時代の風に関する知識が大変重要になってきました。
現在のイノベーションの連鎖は過去とは不連続な世界を作っています。とりわけこの十年の変化は想像をこえたものでした。その結果不連続な世界に対応できなかった古い企業が次々と没落しています。あの名門のGEやIBMの没落を目の当たりにすると近未来に関する知識が明暗を分けることがわかります。小売業がAmazonに次々と敗退し没落していく様子も象徴的です。
組織の一部の人々がわかっていても組織として近未来の大波を認識していないと事業の再定義とそれに対応した行動は取れません。そしてとりわけ経営陣が危機感を持って変革の先頭に立たなければ企業はその大波にのみこまれます。
近未来の知識は未来予測ではありません。“すでに起こった未来”を確認すればいいのです。重要な未来形の知識とは“すでに起こった未来”の知識です。

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