【短】世界の中心のスルメ【2021年6月執筆】

 不可説を書いていると、自分でもいったいこの文章は何なのか、何を書いてるのか、頭大丈夫か、ばあさんめしはまだかなどと分からなくなることがあるが、それより気になるのは不可説の評判であり、ありがたいことに意外と「おもしろい」と評判なのである。非常に嬉しい。心から嬉しい。
 しかし不思議と、自己評価とみんなの評価が違うことが多い。自分では間に合わせで適当に書いたと思われるような文章が意外とウケたりするのである。
 このことから、不可説はスルメであることが分かる。最初はあんまりよくないと思うが、噛めば噛むほどうまみが出るというか、書いてしばらくしてから読み返すと確かになんかいいかもしれない、と思うのだ。
 一方、そのほかの大半の創作物は、逆スルメである。逆スルメとは、最初はいいものをつくったなあと思うけれど、あとから見返してみるとあんまりよくないとか、欠点があるなあと思える現象のことで、文章に限らず、絵とか音楽とか、ツイッターのつぶやきなんかもそうだ。作ってるときはテンション高いけどあとから見返すと面白くないのだ。つまり、この世は逆スルメであることが分かる。スルメの逆とはひっくり返ったスルメのことである。この世の全ての物質は素粒子からできているが、素粒子は全てスルメから成る。世界の中心には須弥山(しゅみせん)という山があるのは中学社会でも習うが、その須弥山の頂上にもスルメが鎮座している。宇宙の中心にスルメがあるということを読み取る力が、共通テストにおいて求められるものである。

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