天文学と人文学はあるのに地文学はない(前編)

「天地人」とは今ナウいヤングの間で流行のオシャレワードで、順序や順位を表すために用いられるのだが、これと矛盾するのが学問の領域である。というのも、「天文学」「人文学」はあるのに「地文学」はないのだ。
本誌では、これを解決するために北海道で山を買い取って研究拠点をつくり「地文学」の研究を始めたサイクロン谷口氏(66, 神奈川牛肉大学名誉教授)に独占インタビューを敢行。地文学の魅力と、その将来にかける熱い想いに迫る。(取材・カシューナッツ山下(52, 埼玉バナナ栽培専門学校非常勤講師))

 「地文学とは、ずばり『地面に文学作品を書いてそれを眺めながら研究する学問』のことです。こういうことをやってる人は、世界中を探しても私くらいじゃないでしょうか(笑)」。谷口氏はあさっての方向を見つめながら意気揚々と語った。

 富山県立ジャイアントパンダ大好き高校に在籍中、国語教師のビルドアップ坂本が漢文の授業で解説した「天地人点」(「一二点」「上下点」と同様の返り点の一種で、生物学的にはトラフグに近いとされる)に感銘を受け、天地人点について専門的に並べる東京漢文訓読大学訓点学部返り点学科に進学。漢文の授業が豊富に用意されているのかと思っていたら、さまざまな公共の建物の壁に無意味に返り点をひたすらスプレーで書いていく実技の授業を週15コマ受けるだけで拍子抜け。しかし「これだけで大卒資格がもらえると考えると、うれしくて(笑)。授業を欠席したり教授にたてついたりするとサトウキビの茎で殴打されることもあって、授業には一切の疑問を持たず楽しくやっていましたね」

 漢文を学べなかった落胆が大きかったこともあり、授業外でも迷惑行為を繰り返して逮捕者も多数出たが、学友とひたすら「天地人」を書いているうちに、ますます「天地人」の魅力に取りつかれていったという。食事も天地人と名前が似ている天下一品のこってりラーメンと、大学の近くにあった「枝豆パフェ専門店 てんちん」の唐揚げ弁当のみを食べ続け、体重も34kgにまで増えた。しかし、それでも天地人をやめることはできず、ついにこの疑問に至る。「どうして天文学と人文学はあるのに、地文学はないんだろうって思ったんです」

 院試の勉強をする際にセノビックを飲みすぎたせいでこの疑問も忘れてしまったというが、3年前、自宅で飼っていたイシガメを死なせたことをきっかけに思い出す。ところが「思い出したはいいものの、そもそも地文学ってなんだよという疑問が出てきて。いつも使っているYahoo!きっずで検索しても出てこなかったので、これはもう自分で考えて自分で始めるしかないなってなりましたね(笑)」

 2年間一人で考え続けても答えは出なかったが、1年前のある日、有名地下芸人のクーリングオフ大島に相談してみたところ、「それは簡単でガンス。地文学を、地と文学に分けて考えてみればいいのでガンス」とアドバイスをもらった。「あとは早かったです(笑)。地面に文学を書けばいいじゃないかってなって。それなら広い地面が必要だなってことで、北海道のいろんな山を格安で売っているドーナツ屋に頼んで、200畳以上あるこのバカでかい山を無料で譲ってもらったんです」

 谷口氏はわれわれ取材班に研究スペースを見せてくれた。「こうやって、そこらへんの木の枝で文字を書いていくんです」あさっての方向を向きながらそう語り、得意げに「でべそ」の3文字を書いてみせる。地面を文字を書くときに特殊なマントラを唱えているため、雨が降っても文字がぐちゃぐちゃになる心配は8割程度しかないという。

 山の斜面に現在書かれている文学作品は、椎名誠『あやしい探検隊 不思議島へ行く』、資格試験対策研究会『漢字検定2級〔頻出度順〕問題集』、タカノフーズ監修『おかめちゃんの栄養たっぷり納豆レシピ~社員だけが知っている75品~』など、明治・大正期に書かれた不朽の名作ばかりだ。
 谷口氏は1日に3時間程度これらの作品を眺め、気になったところを電子ノートに書き写し、それを基に研究を行っている。今年の研究成果を聞くと、自信に満ちた表情で「現代日本では、少子高齢化が問題となっています。ひとえに、子供の数が少なくなり高齢者の数が増えていることが問題なのです」と将来の展望を語った。

 谷口氏は研究成果を定期的に日本産婦人科学会に発表しており「何を言っているのか分からない」「場違いだ」「埼玉県には海がない」と高い評価を得ている。今までに打ち立てた一番の研究成果について聞くと「国際社会の情勢は日に日に険しくなっています。地球全体のいろいろな国をめぐる状況が、年月を経るごとにどんどん厳しくなっていることの証左と言えるでしょう」と鋭く分析した。

後編へつづく



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