ウェルナー症候群(指定難病191)

ウェルナー(Werner)症候群は1904年にドイツの医師オットー・ウェルナー(Otto Werner)により初めて報告された稀な遺伝病である。この病気は思春期を過ぎる頃より急速に老化が進んでいくようにみえることから、「早く老いる」病気=早老症のひとつといわれている。20歳代から白髪、脱毛、両目の白内障がおき、手足の筋肉や皮膚もやせて固くなり、実年齢より「老けて見える」ことが多くなります。糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)も多く、かつては多くの患者が40歳代で悪性腫瘍や心筋梗塞などにより亡くなっていた。今では治療法の進歩により寿命が延びて50~60歳代の方もいる。その一方で足先や肘などの深いキズがいつまでも治らず(難治性皮膚潰瘍)、感染を繰り返して足を切断してしまうなど、なお多くの患者が大変な日常生活の苦労を強いられている。いくつかの研究により、日本のウェルナー症候群の患者数は約2,000名、病気になる確率はおよそ5~6万人に一人と推定されている。地域的には、世界中で報告されている患者のうち約6割が日本人であり、我が国に多いと考えられている。また以前は、主に血縁が濃くなる近親婚(いとこ婚やはとこ婚)の多い地域で報告されてきたが、最近では近親婚によらない発病者も増加している。日頃の食べ物や運動などの生活習慣は、発病とは関係ないと考えられている。WRNと呼ばれる遺伝子の異常が原因と考えられている。私たちのからだの設計図であるDNA*1が傷ついた時に修理する役割を担っているのがWRN(DNAヘリカーゼともいう)。しかし、WRNの異常によりなぜ老化が早く進むようになるのかはまだ分かっていない。ヒトは両親からもらった遺伝子を一対(2つ)ずつ持っている。ウェルナー症候群は2つのWRN遺伝子の両方に異常がある時だけ発病する。患者の両親はそれぞれひとつだけ原因遺伝子を持ち、自身は発病していないケースがほとんどである。患者の兄弟姉妹では確率的に約4人に1人が発病するが、患者の子どもや、さらにその子どもが同じように発病する確率は計算上200~400人に1人以下であり、結論として可能性は非常に少ない。20歳代以降に白髪・脱毛などの毛髪の変化や、白内障(両目の場合が多い)、かん高くかすれた声などの症状がおきてくる。また腕や脚の筋肉がやせ、皮膚も固く薄くなり、深いキズができて治りにくくなる(難治性皮膚潰瘍)。身長は低いことが多く、レントゲンではしばしばアキレス腱や皮下の石灰化(カルシウム成分が溜まること)が見つかる。また糖尿病や脂質異常症になる方が多く、性ホルモンの働きが落ちてくる更年期なども早い年齢から起こりやすくなる。ウェルナー症候群にはまだ根本的に治す方法がなく、白髪や脱毛、皮膚の変化など「見た目の老化」にも治療や予防方法がない。足のキズは治りにくく、日常生活に大きな支障をきたすので、靴ずれを起こさない、などの予防が重要。できてしまった場合には、洗浄や消毒・保護・保湿などの対症療法が中心になるが、自分のからだの他の場所から皮膚を移植する手術が有効な場合もある。一方、悪性腫瘍や白内障、糖尿病や脂質異常症などは、一般患者と同じ様に手術や投薬などが有効であり、早期発見と治療が重要である。かつては、悪性腫瘍(がん)もしくは心筋梗塞など動脈硬化の病気によって、多くの患者が40歳代半ばで亡くなると言われていた。しかし、最近の研究によると平均寿命が10年以上延び、今では60歳代の患者も増えている。一方で、患者の多くがかかとや足、肘などに治りにくいキズ(難治性皮膚潰瘍)を患い、痛みや感染が続いて足を切断せざるを得ない状況にも至るなど、日常生活に支障を来すようになっていくことが大きな問題である。まず、治りにくい深いキズ(難治性皮膚潰瘍)ができないように、日頃からアキレス腱やかかと、足、肘など潰瘍になりやすい部位をなるべく保護し観察すること。薄く固くなった皮膚は骨に圧迫されてキズができ、やがて深い潰瘍を生じやすいため、当たって痛い箇所やキズになりかけたところは特殊な靴(装具)を作って保護する方法もある。また定期通院により悪性腫瘍の発症をチェックしたり、糖尿病や脂質異常症などの代謝異常を治療・管理して動脈硬化が早く進むのを防いだりすることも大切。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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