多脾症候群(指定難病188)

生まれつき脾臓が数個ある場合、先天性心疾患を合併することが多く、その上、内臓が左右対称的となることが多い。心臓、肺、腹部臓器はもともと左右対称に作られてはいない。心臓はどちらかというと胸郭の左側に位置するし、左心室や右心室の形もそれぞれ異なる。右肺は3つの分葉にわかれ、左肺は2つの分葉にわかれる。胃は腹部の左側に位置し、脾臓は左側、肝臓は右側に位置する。これらの臓器が正常の左右不対称ではなく、左右対称性に形成されることがある。左右不対称が明かでない場合(つまり左右対称的である場合)、内臓錯位と呼び心疾患を合併することが多いので、内臓錯位症候群とも呼ばれる。内臓錯位症候群のうち、左側相同を呈する場合には、脾臓が数個存在することが多い。肺は左右とも2葉で、肝臓は左右どちらかに位置する。このような状態を多脾症あるいは多脾症候群と呼び、50-90%に先天性心疾患を合併する。合併心疾患は奇静脈結合、下大静脈欠損、心房中隔欠損、両大血管右室起始症などが多い。多脾症候群の頻度はよく分かっていない。成人になった多脾症候群の患者がどのくらいいるかは、まだ明らかではないが、手術成績の向上に伴ってその数は増えていくと思われる。現時点で、「このような場合に多脾症候群の赤ちゃんが生まれることが多い」と断定できる環境、要因は見つかっていない。原因は不明で遺伝子異常の関与が稀にある。本人に加えて親子や兄弟にこの病気があることは非常に稀である。遺伝子異常の関与が稀にあるが、多くは突然変異で遺伝することはほとんどない。多脾症では両側上大静脈、下大静脈欠損、単心房、単心室、心房中隔欠損、心内膜床欠損、肺動脈狭窄、両大血管右室起始症、肺高血圧、など多彩である。症状は主として合併する心疾患による。全員に低酸素血症は存在しチアノーゼがみられる。出生当初は肺血流の状況に大きく影響される。肺血流減少型が多く肺動脈狭窄・閉鎖があれば呼吸不全症状(多呼吸、陥没呼吸)は呈することは少なく、チアノーゼが主な症状となる。肺動脈狭窄が無いか軽度だと肺血流量が増加するので呼吸不全症状(多呼吸、陥没呼吸)と一緒に心不全症状(体重増加不良、多汗、哺乳力不良)を呈することとなる。共通房室弁逆流で高度心不全をきたすこともある。心内奇形なしの場合や心房中隔欠損のみの場合があるが、その場合には無症状。洞徐脈、房室解離、発作性上室性頻脈などの不整脈を呈することも多い。多脾症では腸回転異常、総腸間膜症などによる腸閉塞を合併することもある。腸閉塞になると嘔吐など消化器症状が出現し重篤となる。内科的には心不全や肺高血圧に対する薬物治療を行う。カテーテル治療が施行されることもある。最終的には2心室修復が可能な場合には経過は比較的良好である。2心室修復が困難な場合、フォンタン手術となることが多い。フォンタン手術を行うことで一つの心室のみで肺動脈、大動脈の循環を維持していくことになる。フォンタン手術を行うためには、両方向性グレン手術など、幾つかの段階的手術を経なくてはなりません。ただ、患者さん全員がフォンタン手術が可能になるわけではありませんので、主治医の先生のお話をよく聞いてください。経過は合併する心奇形によるが、単心房、単心室、心房中隔欠損、心内膜床欠損、肺動脈狭窄、両大血管右室起始症、肺高血圧、など多彩な組み合わせが多い。多くは出生後まもなく低酸素血症によるチアノーゼを呈する。単心室症の最終手術はフォンタン型手術である。ただ、フォンタン型手術を一期的に行うことはできない。単心室で肺動脈狭窄がなければ肺動脈絞扼術を、肺動脈閉鎖ならブラロック-トージック短絡手術を生後早期に施行し経過をみる。生後3ヶ月以降に両方向性グレン手術、その後にフォンタン型手術を行う。フォンタン型手術は3歳前後までに施行されることが多いようである。フォンタン型手術施行にはクリアしなければならない基準があり、全員の患者でできるわけではない。そのため、慢性の低酸素血症のまま成人となる方もいる。慢性低酸素血症のままだと生活・運動制限がかかることもある。フォンタン型手術は動脈血の低酸素状態を正常の酸素濃度にするための手術である。決して、病気自体を治す手術ではない。長期間、1つの心房、1つの心室で人間の体の循環を回すことは、やはり、どこかで無理が生じる。成人期の患者が増えてきたので、最近、いろいろな問題が出てくることが次第に分かってきた。それらの問題というのは、1)弁逆流、2)不整脈、3)低酸素血症の再発、4)蛋白漏出性胃腸症、5)血栓、6)肝障害など。もともとの心臓の病気が完治したということではないため、定期的に専門医によるフォローが必須となる。肝線維症、肝硬変、肝癌などの有無について肝臓専門医のフォローも必要になることがある。フォンタン手術後は血栓予防のためにワルファリン服用を開始することがある。アスピリン単独投与、アスピリン+ワルファリン併用の場合もある。この抗凝固薬、抗血小板薬投与の方針については施設によって異なっているのが現状。2心室修復ができた場合には、比較的経過は良好である。心内奇形なしの場合や心房中隔欠損のみの場合には、不整脈の出現に注意して経過観察をおこなう。フォンタン型手術後は、一見、正常のように見える患者もいる。しかし、肺動脈内への血流は、心室の持つポンプ機能で送り出しているわけではないので、心臓の予備能力は正常より少ない。激しい運動は不可能ではないが、無理はせずマイペースで運動することが大切である。長く続く動悸、今までにはない息切れ感、足・顔のむくみなどがあれば、主治医に相談すること。青年期以降の患者では就労が問題となる。基本的には重労働は避ける必要がある。フォンタン型手術後の女性の場合は、どうしても妊娠のことが問題になる。フォンタン型手術後の場合は妊娠中に心臓に負担がかかってくる。高校生以降の女性は主治医ときちんと相談しておくことが必要。もし、ワルファリンも服薬していたら、妊娠は禁忌なので、主治医に確認すること。フォンタン型手術に至らなかった患者、フォンタン型手術後でも低酸素血症の残存した患者は、自分で可能な範囲の生活、運動に心がけること。低酸素血症があっても働いている方も多くいる。食事に関しては、普通の食事でよいが、低酸素血症では多血症となるので、鉄分の補給には心がけること。社会福祉制度として幾つかの助成制度があるので、就労については最寄りの地方自治体、ハローワークの窓口で相談すること。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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