無脾症候群(指定難病189)

生まれつき脾臓が無い場合、先天性心疾患を合併することが多く、その上、内臓が左右対称的となることが多い。心臓、肺、腹部臓器はもともと左右対称に作られてはいない。心臓はどちらかというと胸郭の左側に位置し、左心室や右心室の形もそれぞれ異なる。右肺は3つの分葉にわかれ、左肺は2つの分葉にわかれる。胃は腹部の左側に位置し脾臓は左側、肝臓は右側に位置する。これらの臓器が正常の左右不対称ではなく、左右対称性に形成されることがある。左右不対称が明かでない場合(つまり左右対称的である場合)、内臓錯位と呼び、心疾患を合併することが多いので、内臓錯位症候群とも呼ばれる。内臓錯位症候群のうち、右側相同を呈する場合には、脾臓が無いことが多い。肺は左右とも3葉で、肝臓は左右対称に位置する。このような状態を無脾症あるいは無脾症候群と呼ぶ。50-90%に先天性心疾患を合併する。合併心疾患は、単心房、共通房室弁、単心室、総肺静脈還流異常、肺動脈閉鎖(狭窄)などが多い。先天性心疾患は赤ちゃん約100人に1人の割合で発生する。無脾症候群はその先天性心疾患の約0.9%といわれている。成人になった無脾症候群の患者がどのくらいいるかは、まだ明らかではないが、フォンタン手術の成績向上に伴って、その数は増えていくと思われる。現時点で、「このような場合に無脾症候群の赤ちゃんが生まれることが多い」と断定できる環境、要因は見つかっていない。原因は不明で、遺伝子異常の関与が稀にある。本人に加えて親子や兄弟にこの病気があることは非常に稀である。遺伝子異常の関与が稀にあるが、多くは突然変異で遺伝することはほとんどない。無脾症では心内合併疾患として、両側上大静脈、単心房、共通房室弁、単心室、心房中隔欠損、心内膜床欠損、肺動脈狭窄、両大血管右室起始症、総肺静脈還流異常、動脈管開存、など多彩なものを認める。症状は、主として合併する心疾患による。全員に低酸素血症は存在しチアノーゼがみられる。出生当初は肺血流の状況に大きく影響される。肺血流減少型が多く、肺動脈狭窄・閉鎖があれば呼吸不全症状(多呼吸、陥没呼吸)は呈することは少なく、チアノーゼが主な症状となる。肺動脈狭窄が無いか軽度だと肺血流量が増加するので呼吸不全症状(多呼吸、陥没呼吸)と一緒に心不全症状(体重増加不良、多汗、哺乳力不良)を呈することとなる。共通房室弁逆流で、高度心不全をきたすこともある。総肺静脈還流異常を合併すると多くは重症な低酸素血症、多呼吸、心不全となる。内科的には、心不全や肺高血圧に対する薬物治療を行う。カテーテル治療が施行されることもある。手術による根治療法はない。最終的には2心室修復は困難で、フォンタン手術となることが多い。この手術を行うことで、一つの心室のみで肺動脈、大動脈の循環を維持していくことになる。フォンタン型手術を行うためには、両方向性グレン手術など、幾つかの段階的手術を経なくてはならない。ただ、患者全員がフォンタン型手術が可能になるわけではないので、主治医の話しをよく聞くこと。総肺静脈還流異常を合併すると治療が特に難しくなる。総肺静脈還流異常を別に手術する必要があることもある。細菌感染症に対するワクチン接種をおこなうことが大切。抗菌薬の予防投与をすることがあるので主治医とよく相談すること。経過としては合併する心奇形によるが、単心房、単心室、共通房室弁、肺動脈狭窄の組み合わせが多く、高度のチアノーゼを呈し、フォンタン手術をしないと生涯、心不全、チアノーゼが持続し、予後が悪い疾患である。出生後まもなく低酸素血症によるチアノーゼを呈する。単心室症の最終手術はフォンタン型手術。ただ、フォンタン型手術を一期的に行うことはできない。単心室で肺動脈狭窄がなければ肺動脈絞扼術を、肺動脈閉鎖ならブラロック-トージック短絡手術を生後早期に施行し経過をみる。生後3ヶ月以降に両方向性グレン手術、その後にフォンタン型手術を行う。フォンタン型手術は3歳前後までに施行されることが多いようである。フォンタン型手術施行にはクリアしなければならない基準があり、全員の患者でできるわけではない。そのため、慢性の低酸素血症のまま成人となる方もいる。慢性低酸素血症のだと生活・運動制限がかかることもある。フォンタン型手術は動脈血の低酸素状態を正常の酸素濃度にするための手術。決して、病気自体を治す手術ではない。長期間1つの心房、1つの心室で人間の体の循環を回すことは、やはり、どこかで無理が生じる。成人期の患者が増えてきたので、最近、いろいろな問題が出てくることが次第に分かってきた。それらの問題というのは、1)弁逆流、2)不整脈、3)低酸素血症の再発、4)蛋白漏出性胃腸症、5)血栓、6)肝障害など。もともとの心臓の病気が完治したということではないため、定期的に専門医によるフォローが必須となる。肝線維症、肝硬変、肝癌などの有無について肝臓専門医のフォローも必要になることがある。フォンタン手術後は血栓予防のためにワルファリン服用を開始することがある。アスピリン単独投与、アスピリン+ワルファリン併用の場合もある。この抗凝固薬、抗血小板薬投与の方針については施設によって異なっているのが現状である。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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