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【旅】バンコク3泊5日の旅②観光とアート

  バンコクの市街地中心部には、高級デパートが立ち並ぶ。中に入っている店は、海外の有名ブランドばかりでない。タイのデザイナーによる1着数万円の高級ブランドも並んでいる。高級ブランドから街中のトゥクトゥクに至るまで、タイは歩くだけでたくさんの美を発見することができる。
 今回はそうした観光名所を紹介したい。

王宮・エメラルド寺院

 建物の外観は、観光パンフレットを見れば一目瞭然であっても、細部を観察する楽しみは旅行者に残されている。隣り合った場所にある王宮とエメラルド寺院の優美な建築は、1つ1つの建物に少しづつ異なるデザインが使われ、どれほど見ても新しい発見がある。

 日本の伝統とは異なる美意識がある。国の中心である宮殿や寺院に、このような明るい色彩、精巧な装飾が用いられていること自体が驚きである。
 王宮の建物のうち、近代に入ってから建てられたチャクリー・マハ・プラサート宮殿は、とりわけ壮麗かつ優美である。

 1882年に建てられたタイと西洋の折衷様式のこの宮殿は、パンフレットによれば当時の重臣が「壮大な宮殿を立てることが国王の威厳を示す」と進言をして建てられたものであるという。タイの様式と西洋の様式のバランスはまったく違和感を感じさせない。ダークトーンの窓ガラスや街灯が全体を引きしめており、異なる様式が色遣いの巧みさにより調和している。
 しかし、こうしたタイの美意識を日本の文脈に持ってくると、単純に「かわいい」「派手」で終わってしまいそうな感じもする。それらは、日本ではオーセンティックな価値とはみなされない。あるいは、王宮に派手な色彩や装飾を用いるタイと照らし合わせることで、一方の日本こそは装飾性や色彩の豊かさがオーセンティックな価値観から排除され、非権威的、非主流的、周辺的とみなされているのではないかということに思い至る。建てた側にとっては、王宮は国威を示すための建築であるし、実際に私のような観光客も王宮を見てタイの文化力を感じるという効果がある。タイ人と日本人は同じ建築を見て同じ感想を抱くのだろうか。

木の上に胡蝶蘭の花かごが置かれている
Sanam Chai駅。王宮と博物館の最寄り駅で内装もおしゃれ
Sanam Chai駅地下。古い建物の基礎を保存し、考古学資料を展示している
上の遺跡の壁紙を拡大したもの。ポップでおもしろい

美術館と博物館

 なんだか不思議な気持ちだ。自分は海外の文化を知りたいと思うが、つたない語彙でその魅力を「かわいい」「エキゾチック」のように表現すると、日本国内でそれらの概念が置かれている地位に引きずられてしまう。すなわち、かわいいものは女性的で周辺的、エキゾチックなものは異国的で周辺的、どちらも海外を周辺化するさいの紋切り型なのである。しかし、日本国内で好まれそうな用語法を使ったからといって、海外の魅力を十分に伝えられるとは限らない。美術館や博物館の展示について語ろうとすると、一層の難しさを感じる。

ナショナル・ギャラリー

 王宮の近くにあるナショナル・ギャラリーは近代から現代までのタイの絵画を展示する。表現力があり感性や心に訴えかける作品が多かった。チケットを買おうとしたら日本人の若者が先に並んでいて、ポストカードを指さして「ジャケ買いだな!」なんて言っていた。若い人にも親しまれそうな作風だ。

 現代美術館(MOCA)もまた、近代タイの美術を展示している。建物の下の階から順路に沿って見学する。2階の展示こそタイの歴史や伝説、仏教を題材にしたふつうの絵画と、影絵芝居のような伝統美術であるが、3階から上はずっと現代的な作品が並ぶ。いや、いかに抽象的な現代アートでも「生老病死」を主題にした作品などがあり、仏教が深く根付いていることがわかる。著名な作品の一つに、地獄、地上、天国を3人の画家が描いた「Three Kingdoms」がある。地獄の絵は人々が争い殺し合う場面が描かれており、おどろおどろしい迫力に満ちている。

 木のなかに人の顔や目が埋まっている「Screaming Forest」の紹介動画。
 地獄絵図もそうだが、人の欲望やぎらぎらした内面、迫真の表情をうまく捉えた作品が多いのではないかと思う。表情や感情をとらえた絵は、様式や文化の違いを超えてこちらに迫ってくるものがある。

ベンチにもいろいろなデザインがある
美術館のカフェは日本食
ミュージアムショップ

 展示のなかで、タイ美術の評価を形作った海外の美術館として、日本の「福岡アジア美術館」、シンガポールの「ナショナル・ギャラリー」を挙げていた。しかし日本ではまだアジアの芸術に触れる機会が少ない。それは日本社会にとって一つの欠落ではないかと思う。

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