寝たきりの老親のマイナンバーカードをつくってみた。

noteではご無沙汰しております。福田和代です。

タイトル通りの話なんですけども、やれ健康保険証を廃止してマイナカードに統一するだの、いや健康保険証は廃止しないで別の証明書を作るだの、どっかのお上がトンデモなことを言いだしましたので、同居介護中の父親のマイナンバーカード、がんばって作りました。
何度かあきらめかかったのですが、2022年11月時点、ぶじに入手しました。
こうやったらできた、という自分の手控えと、同じように困っておられる方がもしおられましたらご参考にという意味で、書き残しておきます。
ちょっと長いですが、ご容赦ください。

なにしろ父は、そろそろ9年ちかくほぼ寝たきりなものですから、マイナンバーカードを作っても使う場所がないと思い、放置していたんです。
(母と私は、カードができてすぐ、「ヒトバシラ」として作成しましたとも!)

今年の2月、父のマイナカードを作るようにという督促のハガキが届きまして、しかたなく重い腰を上げ、作成を試みました。

マイナカードの申請は、QRコードをスマホで読み取り、写真を添付して必要な情報を入力するだけで、かんたんにできます。
まぶたがほとんど開けられない父ですが、なんとかワイシャツを着させて、介護ベッドの背中を起こした状態で、胸像写真を撮影し、申請しました。

……一週間ほどでメールが届き、却下されました。

タイトル:【個人番号カード】申請内容不備のお知らせ
(略)
<不備内容>
笑顔等、平常時と著しく異なる表情、またはポージング等により被写体の身体の一部が写り込んでいるため受付できません。(後略)

写真、笑っていませんし手なども写り込んでいませんので、目を閉じて眠っているように見えるせいだと思います。

「なんだよ、作れって言っといて、結局つくれないじゃん」

軽く腹立たしく、2月の時点ではそこで申請を諦めました。

で、10月になって、24年度からの健康保険証廃止のニュースです。
作らせてくれないくせに、何言ってんだと思いつつ、8か月たって少しは状況が変わったかもしれないと考え、再チャレンジすることにしました。
写真も撮り直し、父の体調がよくて、うっすら目が開いている(笑)瞬間を狙い、背景はもうめちゃくちゃでしたけども、とりあえず一枚撮れました。

で、やはりスマホから申請しました。
10月になると、2月時点とは変わったところがありました。
申請した際に、「もし病気などで写真がうまく撮れないような場合は、マイナンバー総合フリーダイヤルに電話して、申請時の番号を伝えるように」という意味のメッセージが表示されるようになったんです。
「おお!」
つぶやきましたね。やっぱり、きっと他にも困ってる人がいたんだよ。

電話しました。
自動音声案内です。
いきなりこう流れます。
「マイナポイントについてお聞きになりたい方は、5番を押してください。その他の方は、xx番を押してください」
で、そこから困りました。カードの申請時に、わけあって写真がうまく撮れていない可能性がありますよ、と伝えたいだけなんですが、それがいったい何番を選んだらいいのかわかんない。(今もわかりません。いったい何番を選んだら良かったの?)
私、エエ度胸してますんで、直感にしたがって適当に選びましたけどね。
たぶん高齢者、かなり戸惑うと思います。
だいたい、マイナポイントが最初に来るのっておかしくないですか。
それ一番大事なことでしょうか。

で、自動音声ではない、人間の担当者が出てこられたので事情を説明し、やっぱり担当が違っていたようで別のところに送られ、また説明し、また別のところに送られ、と結局3人目の方でやっと、本命の方に出会えたようです。
「どんな写真か、説明していただけますか?」
「ええと、目がほとんど閉じたような状態です。薄目を開けたような」
「背景に何か写り込んでいますか?」
「はあ、おむつのパックとか、お尻ふきシートとか、脱衣かごとか」
てな具合で、およそ20分くらいかけて、ようやく受け付けてもらえたのですが、最後の最後に担当の方が、
「写真の不備について受け付けましたが、証明写真としてどうしても使えないという判断になる可能性もありますので、お伝えしておきますね」
と言われたときには、じわっと徒労感にとらわれました。
まあ、担当者としては、そう言わざるをえないんでしょうけど。

ダメな場合は、だいたい一週間程度で2月と同じようなメールが来るはずなので、ひやひやしながら待ち構えておりましたが、電話が効を奏したか、メール届かず。
二週間くらいして、カードができたので市役所に受け取りに行くようにという封書が届きました!

やったぜ! 苦労の甲斐あって、作成できた!

と、喜んだのもつかの間。

同封されていた資料をよく読むと、だんだんまた不安になってきました。
本来、マイナカードは本人が受け取りにいかねばなりません。
ですが、事情があってどうしても期日までに受け取りにいけない場合は、代理人の受け取りも認められています。
うちの父の場合、ほぼ寝たきりですし、車椅子に乗せて介護タクシーを呼んで、どうにか市役所に連れていったとしても、満足な受け答えができませんので、母に代理人として受け取りに行ってもらうことにしました。

ところが、代理人が受け取る場合、本人(父)の身元を証明する、写真入りの身分証明書、2点を提示する必要があると書類には書かれているんです。
写真入りの身分証明書とは、運転免許証や免許返納の証明書、パスポート、住基カードなど。
いや~、9年近く寝たきりの人間、そんなもの持ってませんわ。

こりゃダメかな……と再びあきらめかけましたが、母に言いました。
「とにかく窓口に行って、写真つきの身分証明書がひとつもないと説明して、なんとかしてもらおう!」

その判断は間違いではなかったようで、市役所に行くと
「個人番号カード顔写真証明書」
なる用紙を渡され、父の写真をつけて、ケアマネさんの署名をもらってくるようにと指示されたとのこと。
まあ、いろいろハラハラさせられましたし、粘り強い対応が必要でしたが、そんなこんなでどうにか無事に父のマイナンバーカードを受け取ることができました!!

正直思いましたけれども、これ家族や周囲のサポートがないと、ご病気の方や寝たきりの高齢者には難しいでしょう。

私は、システム開発者のはしくれとして、マイナンバーをうまく利用すれば、各種の事務手続きが非常に楽になる、わりあい明るい未来を夢見ているのですが、実際に起きていることは、明るいどころではなく。
マイナンバーの情報漏れなんて起こりませんと言われても、その横で「サイバーセキュリティ対策の専門家を雇うカネがない」なんて書かれた日には、安心して信用する気にはなれませんよね。

だから、この記事は、「マイナカードをつくったほうがいいですよ」と言いたいわけではなく、「もし、作りたいのに作れなくて困っている方がいたら、こういう手続きで作れましたよ」とお知らせするためのものです。

2月と比べて、10月の時点ではずいぶん改善されていました。
でも、もしマイナカードの関係者が見ているなら、ひとつだけ言いたいことがあります。
本当に全国民にカードを持たせたいのなら、専任の担当者を置いてでも、どうしても受け取りに行けない人には、カードを持って行くことを考えたほうがいいと思います。

これまで、わが国には「全員が持つ、写真や生体認証入りのちゃんとした身分証明書」がなかった。それは、セキュリティ上、問題だったと私も考えています。
運転免許証は県によっては70%以上が持つそうですが、それでも全員ではありません。パスポートを持っている人の割合は20%以下という記事も見かけました。
住基カードにいたっては、平成27年時点で有効交付枚数717万枚だったそうですから、5~6%というところでしょうか。
健康保険証が身分証明書として使われることも多いですが、写真つきではありませんし、健康保険組合によってデザインも異なりますし、場合によっては紙ですしね! 
「ちゃんとした身分証明書」をつくりたかった、というのは、わかるんですけどね。。。

※最後に、近刊をちらっとお知らせしておきます。ヨロシクネン!