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マギーズ東京で感じたことと僕の決意

今日はマギーズ東京に行ってきたこと、そして感じたことをお話しようと思います。


マギーズセンターとは

「マギーズセンター」というものが1996年に英国で生まれました。創設者のマギーさんという方はもともとは造園家で、ご自身の癌の体験から、治療中でも患者ではなく一人の人間でいられる場所、そして友人のような道案内が欲しいと願ったことがきっかけで作られた施設です。イギリスには20ヶ所以上、その他に香港とかスペインにもあります。日本では唯一東京にあり、2016年オープンしたのがマギーズ東京です。

マギーズ東京

マギーズ東京は豊洲にあって、海も見えます。東京のビルばかりのところから少しだけ距離があるようなところです。マギーズセンターは建てるに当たって、水(海や川)が見えているなど厳しい基準があり、そんな中作られた場所なので、粗雑な言い方ですがすごく雰囲気がいい。居心地が良いように作られているのがすごく分かります。
僕は共通の知人がいたので、とある方とお話できるように事前にメールをしてお伺いしたんですけど、その方もとても素晴らしい。他のスタッフの方も全体としてウェルカムな温かい雰囲気なんですよね。そこで使われている家具や配置にも配慮があります。そういったものも寄付でなりたっているので基本的には提供されたもののようです。作られた経緯ももちろんですが、その場にあるものは無償で使って良いなど、その空間のあり方が良かったです。

心に響く体験

命の期限が決まったり、体のつらさを感じたり、いろんな体験をしていく中で、病院という無機質なところではなく、この空間、マギーズ東京に来れば、患者としてでなく、一人の人間として「そこにいてもいいんだ」「ここに居る価値があなたにはあるんだ」と受け入れられる、そういう雰囲気がすごく伝わってくる場所です。
ひとりの人間としてここに居る価値があると感じられるって、とっても素晴らしいことだよなと思います。すごく胸に響くものがあって、僕はなんだか自然と涙が溢れてきました。
あの体験は何だったんだろうかと、場の持つパワーやそこの雰囲気が醸し出すものを、今僕はこうやって言葉で伝えているんだけれども、言葉では伝わらないものがそこにはあると思います。あの時、ぼくの心に響いたのは何だったんだろうか。
僕はストレングスファインダーのコーチングをしていますが、それはひとり一人に強みがあること、あなた自身であるということがどれだけ価値があることなのかというのをお伝えすることだと思っています。相手が「ひとりの人間として扱われること」、自分の外側にあるものじゃなく、「ひとりひとりが自分自身である事そのものを許せる」がとっても大事だと思っていて、そんな僕の思いに響いてきたのかな。

マギーズ東京に行ったもう一つの理由

僕がマギーズ東京に行った理由は、その場の雰囲気を体感したかったというのも大きな理由ですが、もう一つ、今、僕の近しい人が癌なんです。関わる場合、医者として役割の中で関わる方が楽ですよね。医者という役割を果たすということが明確だから。でも、一人の人間として近しい人に関わったり、医者としてではなく相談を受けるということもある。そんな中で関わるのは大変で、距離感が分からなくなるというか、どうしてよいか分からなくなっちゃう自分がいます。人と人としての関わりのはずなのに、妙に医者という視点を捨てきれないというか。落としきれずに接することはすごく難しい。そんな話をしてきました。その悩み事そのものが解決されたというよりも、今度大切な人と一緒に行きたいなと思いました。知り合いにも行って欲しいなと思いました。

病気になる前から家族の関係に関わりたい

僕はもともと命の締めくくりや緩和ケアの領域で医者になろうと思ってた頃もありました。人が病気になると、その家族の在り方や関わりが色濃く湧き上がってくるんです。それが尊いものとして患者さんを包み込むこともあるし、一方でやや大変な状況として課題が浮き彫りになって苦しい思いをすることもあります。命の終わりを明確に意識するから、家族の関係性を良くしていこうと関わりが増えて、関係性が浮き彫りになるんでしょう。だけど、そこからでなく、もっと前から耕すことが大切だと思っています。ACP(アドバンスケアプランニング)という、いざという時にどんな生活をするのか、どんな医療的なケアを望むのか、どんな価値観で生きていきたいのか、そんな話し合いを人生の最終段階でなくもっと前からする、もっと前から関わるということを活動の一つとしてやっていきたいと思っています。
僕は19歳で父を亡くしています。最後の3ヶ月に父親と向き合わなかったことをすごく後悔していました。緩和ケアで患者さんに関わって、僕の後悔は、最後の3ヶ月父から目を背けたことじゃなくて、僕が生きていく中で父との関係性を築くことができなかったことなんじゃないかと気付きました。寂しかったんですね。
だから、最後の最後に人と関わることじゃなくて、生きていく中で、もっと早い段階で家族の関係性に関わろうって、産業医として仕事をしたり、病気になっていない人と向き合ったりしています。

覚悟が決まった体験

それでも、今回マギーズ東京を訪れて、その空気に触れてお話をする中で、命の終わりを意識して、いざ家族とどう関わって良いか困っていたり、何かの病気がきっかけで家族の関係性がうまくいかずに困っている方々に、もっと積極的に関わろうという気持ちがぐっと湧いてきて、覚悟が決まったような体験をしました。
そんな中、当時緩和ケアで担当していた患者さんの顔が思い浮かんできました。僕が緩和ケアの仕事をしていると、そんな大切な方との思い出や記憶が薄れてしまうのかななんて思いましたが、あの場で思い出した時はグっと心が震えて、少し涙が出て。
それはまだ喪失感や悲しさから出た涙だったのかなとも思ったんですけど、後から一人で考えて、少し違うのかなと思ったりしました。マギーズ東京に行ってで、深い関わりができた方々のことを思い出して、僕はやっぱり人と深く関わっていきたい、自分の弱いところも差し出せるような、相手の弱いところも受け止められるような関わりをしていきたい、命と命が響き合うような関係を作っていきたいと願っている、僕の願いの強さみたいなものが涙になったのかな。そして、当時それができたっていう喜びにも近いような涙だったのかな、と受け止めています。

まとめ

なんだか、とっ散らかった感ありますが、僕がマギーズ東京に行って、その場の雰囲気を感じ、全て受け入れてもらったように感じて、僕の決意が固まったという。とても貴重な体験をさせていただいたなと思います。少しまたここから、僕自身の在り方みたいなものが変わってきているなーというところを感じて、一歩ずつ進んでいきたいなと思いました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。ここまで読んでくれるって嬉しいですね。

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