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【ソフトテニス法律相談】賞金大会開催の注意点

ソフトテニス好き弁護士ふくもとです。

前回に引き続いて「ソフトテニス法律相談」と題して、Q&A形式で記事を書いてみたいと思います。

【ソフトテニス法律相談】No.2
Q. 賞金大会を開催することに法的な問題はありますか?
A. 最も注意すべきは、刑法上の「賭博」への該当性です。選手が賞金大会の参加料を支払い、その参加料が賞金の原資となり、勝ち抜いた選手に賞金が支払われるという場合には、選手の賞金大会への参加行為が「賭博」に当たり、選手や主催者が刑罰の対象となる可能性があります。「賭博」に当たることを避けるためには、賞金の原資を別に準備する必要があります。


1 「賭博」とは

「賭博」とは、2人以上の者が、偶然の勝敗により財物や財産上の利益(以下「財物等」といいます。)の得喪を争う行為をいいます。
「偶然の勝敗」は、勝敗の決定に偶然的要素が存在するのであれば、スポーツのように当事者の技量に差があっても、これに当たると考えられています。
「財物等の得喪を争う」は、勝者が財物等を得て、その反面、敗者がそれを失うことをいいます。

ソフトテニスについても、選手が賞金大会の参加料を支払い、その参加料が賞金の原資となり、勝ち抜いた選手に賞金が支払われるという場合には、選手の大会への参加行為が「偶然の勝敗により財物等の得喪を争う行為」であるとして、選手が、賭博罪に問われる可能性があります。
そして、この場合、大会の主催者による賞金大会の開催行為は、賭博場を開張して利益を図る行為であるとして、大会主催者が、賭博場開張図利罪に問われる可能性があります。

(賭博)
第百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

刑法(明治四十年法律第四十五号)


2 「賭博」に当たらないようにするためには

「賭博」の成立には、前述した「財物等の得喪を争う」関係が必要ですが、反対に、この関係がなければ、「賭博」には当たりません。
したがって、選手が賞金の原資を拠出せず、賞金の原資が別に準備される場合には、「賭博」には当たらないと考えられます。
具体的な例を挙げると、選手が大会の参加料を支払うことをせず、賞金の原資が主催者以外のスポンサーから直接提供される場合などが想定されます。

もっとも、賞金大会の規模や運営資金の関係から、テニスコート代や人件費等の運営経費に充てる目的で、選手から参加料を徴収したい場合もあると思われます。
選手から参加料を徴収して賞金大会を開催することは一切認められないのかというと、“選手の支払った参加料が賞金の原資になっていない”といえるのであれば、必ずしもそうではないと考えます。

“選手の支払った参加料が賞金の原資になっていない”と言えるには、①参加料は大会運営上の必要経費のみに充て、賞金の原資と分別して管理すること、②賞金獲得の有無にかかわらず、選手にとって大会が魅力的で、射幸性が抑制されており、参加料が合理的な金額であること、といった点に十分留意する必要があると考えます。


【参考文献】
橋爪隆「賭博罪をめぐる論点について」(2022)
(経済産業省 第5回スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会 開催資料)

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