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ツイッターなどSNS上でソフトテニスの発信をする際の注意点

弁護士ソフトテニス愛好家のふくもとです。

9月も中旬になりました。
夏の間は多くの大会が開催されました。
私は、現地で観戦する機会はなかったのですが、SNSで結果をチェックしたり、大会の様子をYoutubeで観たりしました。
ツイッターのタイムラインを見ているだけで、大会の盛り上がりが伝わってきますよね。

その一方で、誰でも情報を発信できるようになったことで、誹謗中傷や、誹謗中傷に端を発した炎上の問題も発生しています。

今回は、「ツイッターなどSNS上でソフトテニスの発信をする際の注意点」というテーマで、「誹謗中傷」という言葉の理解も深めつつ、法律的なお話も含めて、弁護士の視点から書いていきたいと思います。


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1 発信の有する意義と弊害

最近では、試合会場に赴かなくても、ツイッターやインスタグラムなどのSNSや、ウェブサイト上での発信により、ソフトテニスの大会の日程や、結果をチェックすることができ、Youtubeで多くの試合動画を観ることができます。
また、プロ選手を始めとするソフトテニスのプレーヤーの中にも、SNSやYoutubeを利用している選手がおり、試合や練習の様子にとどまらない幅広い内容の発信がされています。

ソフトテニスの愛好家・ファンの人たちは、そうして得た情報をもとに、試合結果の感想や、大会に向けた応援コメントなど様々な内容の発信を、SNS上や、Youtubeのコメント欄などに投稿しています。

このように、プレーヤー、大会運営者、指導者、ファンなど、ソフトテニスに関係する多くの人が、様々な視点から、様々な情報を発信することで、ソフトテニスへの注目は集まり、ソフトテニスはますます盛り上がっていっていると思います。

その一方で、誰もが気軽に発信できるようになったことで、誹謗中傷や、誹謗中傷に端を発する炎上の発生という見過ごせない問題が、ソフトテニスでも起こっています。

ソフトテニスの盛り上がりに水を差すような事態を生じさせないため、日常的に発信をしている人も、自分の投稿に問題がないか、今一度見直してみてください。

2 誹謗中傷とは

「誹謗中傷」という言葉についての理解を深めましょう。

まず、「誹謗中傷」という言葉の意味を正確に理解しているでしょうか。
「誹謗中傷」とは、“根拠のない悪口を言い相手を傷つけること”という意味の言葉であり(新村出編『広辞苑 第七版』(2018年、岩波書店))、「誹謗」という言葉と、「中傷」という言葉が合わさって作られた言葉です。

次に、「誹謗中傷」と、「批判」の違いは理解しているでしょうか。
「批判」は、“物事を検討し、良い点は正当に評価する一方、悪い点について、根拠を持って指摘すること”といった意味を持つ言葉です。

「批判」は、情報を発信する人の正当な表現活動である一方、「誹謗中傷」は、相手の人格を否定または攻撃するといった加害行為であり、両者は大きく異なります。

ソフトテニスの関係者による発信の場合にも、ある発信が、「批判」を通り越して「誹謗中傷」にならないようにする必要があります。

大会の結果の感想が語られる場合や、特定の選手や関係者の活動内容、立ち居振舞い等について意見が述べられる場合などには、特に注意すべきだと言えます。

3 誹謗中傷の法的責任

はじめに

誹謗中傷については、法的な責任が発生するおそれがあります。
刑事責任としては、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)や、侮辱罪(刑法第231条)などの犯罪が成立する可能性があります。
民事責任としては、不法行為に基づく損害賠償責任(民法第709条)などが発生する可能性があります。

一般的に、刑事責任よりも、民事責任の方が、発生する範囲が広いと考えられますので、この記事では、民事責任の不法行為に基づく損害賠償責任に絞ってお話をしたいと思います。

名誉毀損の不法行為と、名誉感情侵害の不法行為

民法第709条は、次のとおり、不法行為に基づく損害賠償責任を定めています。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

「誹謗中傷」に関係がある」不法行為としては、代表的には、名誉毀損の不法行為と、名誉感情侵害の不法行為があります。

それでは、名誉毀損と、名誉感情侵害の違いをみてみましょう。

名誉毀損における「名誉」とは、”人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価”をいい(最高裁判所昭和61年6月11日 民集第40巻4号872頁大法廷判決)、人の社会的評価を指します。

これに対し、名誉感情侵害における「名誉感情」とは、一般に、”人が自分自身の人格的価値について有する主観的な評価”をいい、プライドや自尊心という表現がされることもあります。

したがって、両者は、人の客観的評価か、主観的評価か、という点で異なるものであるといえます。

「誹謗中傷」といえるようなSNS上などでの発信が、名誉毀損にあたる場合もあれば、名誉感情侵害にあたる場合もあり、両方が成立する場合も、片方のみが成立する場合もあるということになります。

それぞれについて、次章以下で、詳しく見ていきます。

4 名誉毀損の不法行為

名誉毀損の不法行為が成立する要件のうち、重要なのは、①人の社会的評価を低下させる事実の流布②その事実の流布により人の社会的評価が低下したことという点です。

①人の社会的評価を低下させる事実の「流布」

まず、①の要件のうち、「事実」という点は、例えば、「気持ち悪い」といった表現一語のみでは成立しない可能性があること意味しています。

全ての要件を細かく検討をすることは、紙幅の関係上難しいので、まずは、「流布」という点に絞って解説します。
この点、「流布」について、最高裁判所平成15年3月14日判決の調査官解説によれば、以下のような指摘がされているとのことです(松尾剛行ほか著『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版 [勁草法律実務シリーズ]』(勁草書房、2019年)142頁)。

現実に広く流布されたことまで必要ではなく、流布の可能性があればよいと解されており、相手方が特定少数であっても、間接に多数人に認識可能であれば、名誉毀損が成立する。

したがって、SNS上や、インターネット上で、閲覧に制限をかけることなく発信された情報については、たとえそのフォロワーが少なかったとしても、名誉毀損が成立する余地があるといえます。

また、「流布」の主体となる場合について、以下の2点に留意する必要があります。

(i) リツイートも流布の主体となる可能性がある

ツイッターであれば、他人の投稿を第三者に拡散する機能として、「リツイート」があります。
誹謗中傷が含まれる投稿について、投稿者は、当然「流布」の主体となり得ますが、リツイートをした人が「流布」の主体となることはあるのでしょうか。

これについては、ある可能性があるといえます。
実際の過去の裁判例においては、以下の判断がされ、結論として名誉毀損が肯定されています。

原告●●は、リツイートは、原告●●自身が発信したものでない旨主張……する。しかし、リツイートも、ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるものであり、原告●●の発言行為とみるべきであるから、……原告●●の上記主張には理由がない。

東京地方裁判所平成26年12月24日判決

リツイートには、必ずしも賛同を表す意味をもつわけではないという性質や、ボタン一つでできてしまい軽い気持ちで行ってしまう可能性があるといった性質があるものと思います。

しかし、上記のような判断が判決でなされている例もあるため、誹謗中傷が含まれると思われるような投稿については、リツイートしてよいか、慎重になる方がよいと考えます。

(ii) Youtubeなどのコメント欄の書き込みの放置も「流布」の主体となる可能性がある

例えば、試合動画のYoutubeのコメント欄に、選手に対する誹謗中傷のコメントが投稿されることがあります。
このような場合に、誹謗中傷のコメントを行った当事者は、当然、「流布」の主体となり得ます。
それでは、コメント欄の削除等の措置を講じなかったYoutubeの動画投稿者が「流布」の主体となることはあるのでしょうか。

これについても、ないとは言い切れないといえます。
過去の裁判例においては、ブログのコメント欄についてであり、結論として名誉毀損が否定されたものではありますが、以下のような判断がされたものがあります。

ブログの開設者である原告にコメントの削除等の措置を講じなかった不作為について不法行為が成立するためには、少なくとも、コメントの内容自体によって被告の権利が侵害されていることのほか、例えばコメントの内容が公共の利害に関する事実でないこと又は公益目的でないことが明らかな誹謗中傷であるなど、原告において、第三者の投稿したコメントの内容が被告の権利を違法に侵害していることを知ることができたと認めるに足りる相当な理由が認められなければならない。

東京地方裁判所平成28年1月29日判決・労働判例1136号72頁

上記の判断は、裏を返せば、第三者の投稿したコメントが、明らかな誹謗中傷であるなどといった事情があれば、コメントの削除等の措置を講じなかったことに不法行為が成立する余地があるということになります。

したがって、Youtubeなどのコメント欄についても、定期的に、明らかな誹謗中傷がないかを確認し、発見した場合には速やかに削除する等の措置を取ることが望ましいと考えます。

②人の社会的評価の低下の有無

次に、②人の社会的評価の低下の有無の判断基準について確認したいと思います。

この点については、古くから、一般読者の普通の注意と読み方を基準とするとされています(新聞記事の例・最高裁判所昭和31年7月20日判決民集第10巻8号1059頁、インターネット上の記事の例・最高裁判所平成24年3月23日判決集民第240号149頁)。

※補足説明
なぜ、社会的評価の低下の有無は、「一般読者の普通の注意と読み方」を基準とするのでしょうか。
この点、まず、名誉毀損における「名誉」は、人の「社会的」評価を意味するところ、人の「社会的」評価を変動させるのは、一般的な大多数の読者の受け止め方であるということになります。
そうすると、「一般読者」とは異なる「一部の読者」が、例外的な読み方・解釈をしても「社会的」評価への影響は少ないと考えられます。
そのため、人の社会的評価の低下の有無は、「一般読者の普通の注意と読み方」を基準として判断されるということなのです。

松尾剛行ほか著『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版
[勁草法律実務シリーズ]』(勁草書房、2019年)64頁参照

そのため、発信者としては、対象の人の社会的評価を低下させるものではないと思っていたとしても、「一般読者の普通の注意と読み方」を基準にすると、人の社会的評価を低下させる表現になっている可能性があり得ます。

SNSやインターネット上に、発信する場合には、自分の投稿の内容に問題がないか、客観的に判断する心を忘れないようにしましょう。

もっとも、以上みてきた要件を満たすような場合でも、その発信に公共の利害にかかる事実を公益目的がある場合や、その発信が特定の事実を基礎とした公正な論評である場合等には、名誉毀損の成立が否定される余地もありますが、紙幅の関係上、詳細には立ち入りません。

5 名誉感情侵害の不法行為

次に、名誉毀損とは異なる名誉感情侵害について見てみましょう。

名誉感情侵害が不法行為になるためには、当然、「名誉感情」の侵害が必要です。
しかし、名誉感情の侵害があればいつでも不法行為との評価を受けるわけではありません。

最高裁判所の判決では、名誉感情侵害の不法行為の成否について、以下のとおり、「社会通念上許される限度」を超えるか否かを問題としました。

このような記述は、「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ,被上告人の人格的価値に関し、具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく、被上告人の名誉感情を侵害するにとどまるものであって、これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない。

最高裁判所平成22年4月13日判決民集第64巻3号758頁

主観的な名誉感情の侵害の有無というのは、その人自身のプライドや自尊心の問題でもあり、他人には判断しづらいといえます。
その一方、表現の自由は、憲法上認められた重要な自由です。
これらの点を考慮して、名誉感情の侵害に不法行為が成立する範囲が広がりすぎないよう、「社会通念上許される限度」か否かを問題としているものと思われます。

したがって、他人が傷つくおそれがあるからといった理由で、直ちにその発信を控える必要はないと考えますが、やはり、自分の投稿を他人が読んだ時にどのように思われるかという点について、客観的に判断する心を忘れないようにしましょう。

6 まとめ

この記事では、ツイッターなどSNS上でソフトテニスの発信をする際の注意点というテーマで、①発信の持つ意義②誹謗中傷の意味③誹謗中傷の法的責任について、解説しました。

ソフトテニスに関する情報が発信されることは、ソフトテニスに注目を集めさせ、ソフトテニスという競技を盛り上げていくためにとても重要です。

その一方で、「発信」には、「誹謗中傷」という問題が隣り合わせで存在しており、場合によっては法的な責任も生じ得ます。

最近、ソフトテニスに関する発信を目にする機会は多く、ソフトテニス愛好者の一人である私自身、とても楽しませてもらっています。
このような盛り上がりに水を差す事態が生じないようにするためにも、発信を行う際の注意点について、この記事で理解を深めていただければ幸いです。自戒を込めて。

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