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東京とふくしまの二拠点生活で、絵本から広がるコミュニケーションを創造

「ふくしまおこしびとPlus」ではふくしまの地域づくりキーパーソンや関係人口の方に、福島の魅力や想いをお話いただきます


松本春野さんProfile
絵本作家 1984年東京都生まれ
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。表情豊かな人々やその暮らしを描くことを得意とし、児童書を中心に教科書、雑誌、広告、映像など、幅広い媒体で創作。絵本の著書は20冊以上にのぼり、執筆、講演活動も行う。東日本大震災後は、県外避難をした少女の物語「ふくしまからきた子」、その後の帰還を描いた「ふくしまからきた子そつぎょう」(共に岩崎書店)を、絵本画家いわさきちひろの長男で、絵本評論家の父、松本猛と制作。2021年には、震災当時に赤ちゃんだったため、震災の記憶がない少年を主人公にした「ぼくのうまれたところ ふくしま」を福島民友新聞社から出版し、震災伝承に努めている。絵を担当した主な絵本著書には、黒柳徹子氏の戦争体験を絵本化した「トットちゃんの 15つぶの だいず」(原案/黒柳徹子 文/柏葉幸子 講談社)、盲目の男性の通勤を、子どもたちが10年以上に渡り支え続けたエピソードを描き、第4回親子で読んでほしい絵本大賞2位、第7回未来屋絵本大賞2位などを受賞をした「バスが来ましたよ」(文/由美村嬉々 アリス館)、多数の外国語に翻訳され、国内外で愛される「Life ライフ」(文/くすのきしげのり 瑞雲舎)などがある。2017年から猪苗代町にもアトリエを構え、東京と二拠点居住をしている。


東京と福島の二拠点生活をすることになったきっかけを教えてください

東日本大震災・原発事故後に、震災をテーマにした絵本の制作のため福島を取材するうちに、浜通り・中通り・会津地方と、三つのバラエティーに富んだ豊かな自然や文化が楽しめる広い福島県に魅力を感じるようになりました。また、取材で出会った人々の逆境に負けずに前進していく姿に力をもらい、私自身の生き方にも影響していったように思います。猪苗代を選んだのは、猪苗代湖と磐梯山が本当に美しいから。裏磐梯の自然も大好きです。母方のルーツが会津若松にあり、会津地方を身近に感じていたことも大きいです。


「ふくしまからきた子」などの福島関連の絵本を創作されるにあたり、取材を通じて感じたことなどあれば教えて下さい

震災が起こり、当時離れた東京で報道に触れて感じていたのは「福島は危険、怖い、かわいそう」でした。けれど、絵本制作のための取材を重ね、長く福島に関わる中で、その感情は変わっていきました。当然のことですが、福島の人々は当事者として、県外の人々よりもはるかに震災被害や放射線などと向き合い、困難を解決していく建設的な日々を送っていたのです。無責任に騒ぎ立てた過去の自分を恥じ、「被災地」から1日でも早く脱して、豊かな福島での日常を取り戻そうとする人々の活動に自分も賛同していこうと思うようになり、今に至ります。


「ふくしまからきた子」(岩崎書店)

今後取り組みたいことはありますか。

震災後、被災地や被災者への対応の中で、善意のすれ違いがたくさん起こり、風評被害など、新たな問題が出て複雑化していきました。
震災の教訓として、科学的な知見はもちろんですが、同時に相手の立場や気持ちを想像する力、コミュニケーション力も非常に重要です。自分自身の苦い経験からの大きな気づきでした。絵本は一人でも読めますが、誰かと一緒に読み、意見を言い合える優れたコミュニケーションツールです。震災の絵本を通し、想像とコミュニケーションのワークショップをこの先も続けていけたらと思っています。


講演会のようす

松本春野さん
http://harunomatsumoto.com


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