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しゃべる柴犬が面白い 令和版セカイ名作劇場!?【#最近すきな動画】

「幸せは感じるものなのですよ、ご主人」
目をキラキラ輝かせて、茶色の毛並みの柴犬が言った。

・・・犬が、しゃべってる。
いったい私は、何を見せられているんだろう?
YouTubeを視聴していると、思いがけない出会いがたまにある。

最近、Webショートアニメ『世界の終わりに柴犬と』、通称"せか柴"にハマっている。

可愛らしい絵柄で、1話あたり3分弱という短さなので隙間時間に観るのにちょうどよい。

作中に細かい背景説明は一切ないのだが、舞台はおそらく何らかの事情で、文明が崩壊した終末世界。

登場するのは、動物と意志疎通ができる女子高生と、彼女を「ご主人」と呼ぶ柴犬ハルさん。生存者としての人間は、この世界には他にいない。

この柴犬ハルさんが、博識でよくしゃべる。
"ご主人"に「長い!理屈っぽい!」と叱られながら、荒廃した世界を、ひとりと1匹で旅していく。

コミカルな会話を軸に、テンポよく話は進む。
旅の途中に現れるのは、
飼い主を喪ったシベリアンハスキー、
畑仕事をする宇宙人、
人魚を食べて不老不死となった八百比丘尼の"びくにたん"
などである。
何でもアリな世界観で、もう訳がわからない。

石原 雄・著『世界の終わりに柴犬と』は、


元々Twitterで発表され人気となった4コマ漫画だという。
その後、Webマンガサイトで配信され、単行本が刊行し、2022年・夏、WebアニメとしてYouTubeで視聴できるようになった。

なんでこんな他愛もなくゆるい作品が、私をはじめ、多くの人々の心をつかんで離さないのだろう。

これまでにも、主人公が動物と行動を共にするアニメ作品は数多く存在した。中でも各国の有名作品を題材にした『世界名作劇場』シリーズは印象深い。
それらの作品は大抵、幼い主人公が過酷な状況に追い込まれる。
フランダースの犬』や『母をたずねて三千里』など、ご存知の方も多いだろう。

苦難の最中、心の支えになってくれるのが、主人公のそばを離れない動物たち。労るような仕草や表情で、主人公や観ている私たちの心も慰めてくれる。『フランダースの犬』のパトラッシュのけなげさに涙し、『あらいぐまラスカル』のラスカルの可愛さにめろめろになった。
だが、その動物たちだって、主人公と会話ができるワケじゃない。ひとりごとをつぶやく主人公の姿には、哀愁が漂っていた。

思えば名作劇場の数々は、苦境に負けずくじけず前向きに生きていれば、やがて幸せが訪れることを子ども心に叩き込む作品だったように思う。

"せか柴"は、それらの作品とは真逆である。
大人になって疲れきった私に必要なのは、情操教育じゃない。娯楽だ。

常識にとらわれない世界を、愉快に軽やかに旅しているご主人やハルさんの姿に、悲壮感はない。
ボケとツッコミ、コントのような会話は、例え世界が終わっても、信頼できる相棒がそばにいてくれたら、それでいいじゃない、という気分にさせてくれる。

最近は、テレビをつけても、新聞を開いても、殺伐としたニュースばかり。ネットの世界でも、匿名の人物が会ったこともない誰かを誹謗中傷したり、見るに耐えない話題が多い。
そんなギスギスした世の中で、ちょっとした癒しと笑いを求めている方にオススメの作品である。

ただ、ひとつだけ問題がある。
一話視聴するとおすすめ動画として、また新たな映像があらわれる。つい気になってポチっとすると、いつまでもハルさんとご主人がいる世界から抜け出せなくなる。無限のループだ。
短い動画と油断していると、あっという間に時が過ぎてしまう。くれぐれも注意が必要だ。

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