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上海の美術館 近代洋画家 関紫蘭

上海の美術館をめぐる 関紫蘭

昨年11月に1920、30年代に上海洋画壇で活動した関紫蘭(グァン・ズーラン
1903-1985)中国屈指の女性洋画家の展覧会に行った。
テーマは「純全与美妙 PURE AND WONDERFUL 関紫蘭文献展」
友人からお勧めの展覧会と聞いて参観するまで画家の名前は知らなかった。
場所は彼女の生家近くの上海魯迅公園の中の公立美術館の
朱屺瞻芸術馆である。
address: 上海市虹口区欧阳路580号

朱屺瞻艺术馆

上海の中華芸術大学洋画科を卒業した関紫蘭は、1927 年から 1 年弱日本の東京文化学院に留学をし、神戸で個展を開催したほか、二科展覧会にも入選した。裕福な家庭に育った彼女は両親から素晴らしい審美眼を受け継いだ。日常生活の人物や自然を題材に、原色を主体とする色彩と大胆な筆遣いが彼女の画風の特徴だ。

上海は当時、アジア最大の都市として繁栄していた。彼女は上海のモダニズムを代表する先進的な女性であり、度々雑誌で紹介されている。チャイナドレス姿の写真はとても優雅で美しく時代を象徴するモデルそのものだ。

関紫蘭
 1927年8月11日~12日 神戸個展 開催 
1927年8月 神戸個展会場 恩師の陳报一と一緒に 
1928年 東京文化学院

関紫蘭の作品の「少女像」は一番有名な作品だ。
黒髪の少女が赤を基調としたチャイナドレスに身を包み、犬を抱えて椅子に座る姿は、少女の品の良さとクールでかつ知的な優しさを醸し出している。この作品は1929年に完成し、上海の個展で発表された。私もこの作品がとても好きだ。作品は北京の中国美術館に保管されており、1999年には日本で展示されたこともあるそうだ。

少女像 1929年 Oil canvas 90×75 中国美術館

日本留学後は、上海で個展を度々開催して活躍するが、その後、歴史の波に翻弄されながら、晩年まで上海で過ごす。
戦乱の影響があり、残存する作品が少ないのが本当に残念だ。彼女の絵を見ると大胆な原色と優雅なセンスが私を惹きつける。他に静物画、風景画も多く描いており、展覧会では、日中の画家の交流の記録や当時の神戸・上海での個展の写真、作品を紹介する日本の新聞記事も多数展示されていた。

花瓶
少女
少年
1930年 上海個展会場(現在の上海の国際飯店にて)
個展及びグループ展覧の一覧
雑誌紹介記事

私が参観してとても興味深かったことが二つある。
一つ目は、作品の展示以外に、1920年代の日本の画家(中川紀元)、作家(有馬生馬)との交流記録や、渡仏留学をした日本の画家たちが彼女の画風に大きく影響を受けたことが詳細に記載されていたことだ。特にアンリマティスに代表されるフォービズム(野獣派)の影響が色濃いことだ。
 
二つ目は、関紫蘭の人生が、当時の新聞、雑誌等の文献や写真を通じて、日本留学、上海で活躍する時代、文革の時代、改革開放の時代へと彼女のリアルな姿がまるで映画を見るかのように味わえることだ。
彼女は晩年も毎日、丁寧に暮らしていた。身なりを整え、毎朝コーヒーを飲んでいたそうだ。自画像も私は好きな作品だ。
 

自画像
上海の画室にて
自室
展覧会の会場(3階)
花瓶
当時の紹介記事


これまで関紫蘭の作品や資料が少なく、中国でも紹介されてこなかったそうだが、是非、多くの方に知って頂きたいと思う。

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