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規格外になること

りんご農家さんの収穫を今年も手伝いに行った。

縁あって信州に移り住んだ翌年から通わせてもらって、今年で3年目になる。収穫する品種は「サンふじ」。シャキっとして酸味と甘みがあって好きなやつ。シーズンの最後を飾るりんごだ。

JA(農協)などへの出荷用とは別に、贈答用などで頼まれている分の収穫から選別、箱詰めまでを手伝うのだ。

台風やいろいろあったけれど今年は豊作で去年に比べたら体感でも「たくさん成ってる」というのがわかる。

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りんご畑のある地区は、ぎりぎり浸水被害を免れたエリア。それだけに、1年ぶりに対面したりんごの樹のどれもに「無事でよかった」と声をかけたくなった。いや、心の中でかけてた。

最初は少しよそよそしかったりんごの樹も、3年目になると少し距離が近づいて感じられるのがふしぎ。りんごの樹も覚えてくれてたみたいで「待ってたよ」と言ってくれてる感じがした。

ほんと、いつも思うことだけど収穫って決して楽じゃない。一本一本違う枝ぶりの樹から手でりんごを収穫するのだけど、ちゃんと実の成り方を見て収穫しないときれいに獲れない。

収穫そのものは、りんごの果軸を逆方向にプルタブを持ちあげる感覚でひねると簡単に獲れるのだけど、枝に対しての成り方は一個ずつどれも違う。適当にやってしまうと果軸が外れてしまって商品価値が落ちる。

気を抜いてやってしまうと枝でりんごの表面を傷つけたりもしてしまう。結構、気を遣う。

それに矮性台木を使わない(そのほうが樹は長生きする)ので、三脚に登ってそれなりに高い場所で収穫しては収穫カゴを下ろして移動するくり返し。ガチの労働だ。

で、これもふしぎなんだけど、そういう作業が嫌じゃない。楽しい。もちろん、毎日するわけじゃないからなのはわかってる。でも身体も心もちゃんと使う労働の一つとして楽しいのだ。

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今年は半日で400kgほどの収穫。りんごコンテナにして22ケースほど。一般にスーパーなどで袋入りで売られているのは5kgで18玉~20玉のやや小ぶりサイズがメインだけど、贈答用のものはそれより大きな5kgで14玉が主役。

なのだけど、今年は豊作でさらに大きなサイズの5kgで11玉~12玉(赤ちゃんの顔ぐらいある)がたくさんあった。

ふつうに考えれば、大きいりんごすごい! となるところなのだけど、それがそういうわけでもないのだという。

桃なんかは大玉がそのまま価値と価格に反映するのだけど、りんごとなると大きすぎる11玉サイズなんかは市場で買い手がつかない。スーパーの店頭でそんな大きすぎるりんごを誰も買わないのだ。

それに流通させるための箱や資材の規格でも、大きすぎてうまく揃わないので嫌がられる。

なので、せっかく大きく育ったりんごが「規格外」として扱われてしまう。規格外のりんごは出荷しても1個わずか5円。5円って……。

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りんごそのものの品質や味が悪くて価値がないわけじゃない。大玉だから大味ということもなく蜜も入ってめちゃくちゃ甘くておいしい。なのに5円。

べつに人間が勝手にそうやって「規格外」扱いしてるだけで、りんごはりんごなんだけどね。

同情だとか(りんごに同情とかない話なんだけど)でもなく、規格外りんごなんとかならないものか。僕にできることなんて限られてるんだけど、ちょっと考えてしまう。

それは自分自身も規格に合わせることができずに生きてしまってるからなのかもしれないけど。