見出し画像

人が来ない広告をつくる未来

できるだけ人が来ない広告をつくってください。

あるクライアント企業からそんな発注をされたことがある。かなり昔のことだけど。

べつに尖ったクリエイティブが発動してとか、デジタルマーケティングの意味合いですごくターゲティングしてとかではない。

いろんな事情で広告は出さないといけない。でも、そのために大勢の人が集まってしまっても困る。だから、広告は出すけどできるだけ人が来ないように、というのがクライアントからの要望だった。

これがデジタルなあれやこれが使えるメディアを通してならわかる。けど、紙媒体でだ。なかなか難しい。

まあその当時はライターとコピーライターもやってたので、そういう仕事にも遭遇することになる。

僕が組んでた制作チームは優秀だったし、いろんな賞を取ってるクリエイティブディレクター、デザイナーがアサインされてて結果的にはそれなりにクライアントは満足しつつ、人は来ないという「成果」は出すことができた。

ふつうに考えれば、それっておかしな話なのだけど。どういうKPIなんだろうか。

なんでこんなことを思い出したのかというと、なんとなくいま、そんな変な広告をつくったときに似た空気感というか世界線にいるような気がするからだ。

以前のように、できるだけ「たくさん」とか、「大勢」の盛り上がりとか、そういうのは難しい。

そこに異を唱えたいわけでもなく、ただそういう中にいるんだなということ。

で、もしかしたら知ってもらうことは必要だけど、みんなに来てもらいたいわけでもなく「静かな広告」的なものはこれからもあり続けるのかもしれない。

みんなに派手に知らせるわけでもないけど、ちゃんと繋がってる人には届いて、良き何かを分かち合えるためのもの。

強いメッセージを放つのでもなく、遠すぎることも近すぎることもなく、仲のいい知り合い、あるいは友達のために。

関係性の広告というか、もはや広告なんて呼ばないのかもしれないけど。そういうのならやっぱりつくりたいなと思うんだ。