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朝の電車に歯を光らせる

歯のピーク、早くね?

だよね、おかしいよね。

朝の電車の中で、高校生の女の子たちが歯を磨きながら話している。
ちりちりした朝の光が、白い歯にも反射してきれいだなと僕は思う。

一応書き添えておくと、べつにジロジロ見てたわけじゃない。

ちょうど電車に乗ったときに反対側のドアにもたれて歯を磨いてる彼女たちが視界に入ってきたのだ。

だけど歯に何のピークがあるのだろう。歯がイケてて盛り上がってるってことなのか。なんか、歯のノリ悪くてさぁ、とか言うのだろうか。

いや、違う。歯の年齢のことかもしれない。

たしかに、歯だって身体のパーツのひとつなのだから、お肌なんかと同じように若い歯、中年の歯、老人の歯というのがあっても不思議ではない。

実際、歯にも乳歯・永久歯という区別はある。

だけど、おかしい。いくらなんでも大雑把すぎる。なぜって、赤ちゃんの次がもう大人なのだ。乳歯と永久歯しかないなんて。

歯のアオハルはどこに行ったんだろう。

気になる子にホースの水をかけたりかけ返されたりしてジャージを濡らしながらのプール掃除や、どうでもいい上司のひと言で社会の厳しさを思い知るなんていう人生が全部スルーされてるのだ。

高校生の女の子たちが言うように、歯だけピークが早い。

いっそ、歯が一か月に一回くらい生え変わればいいのにと思う。そうしたら、毎月、きれいな歯でいられる。あ、今日、歯が生える日だ。

そんなことを考えていると、彼女たちは歯を磨き終えて満足して電車を降りて行く。鞄の中に歯磨きセットをちゃんと仕舞って。

さっきまで朝の光と輝く歯に包まれていた車内が急に行き先を失ったみたいで、僕は不意に哀しくなる。


※昔のnoteのリライト再放送です